折角なので、日頃から考えていた「施設で ‘蓄音機の演奏会’ や ‘落語会’ などを催すことは可能かどうか」を、思いきって尋ねてみることにしました。
施設長のNさんは 『6Fフロアー(現在 私が訪問している)でなら 構わないですよ。僕も蓄音機を聴いてみたいなあ!』 等とお返事を下さいました。
「実現できれば良いなぁ。」 と私は思いました。
6Fに着くと、風邪引きの方がいらっしゃるとかで、フロアーでは風邪ひき組と引いていない方々を分けて、少し席を離して座らせておりました。
最初に目が合ったキクさん(97才女性)の傍に行くと、キクさんは ‘にっこり’ と愛想笑いはして下さるものの、私のことは覚えていない(?)ようで、少々怪訝そうに私を見ておりました。
『こんにちは。』 とお声がけをし、私の名前が書いてある ‘ネックストラップ名札’ をお見せすると、『あら、わたし、前に (あなたと) 会ったことあるかしら?』 とキクさん。続けて 『わたし、このごろ頭が変なの・・。』 と覚束なげに仰いました。
そして 『最近、何でも忘れてしまうの。だから貴女のお話にも答えられないの・・・。』 と悲しげなお顔をなさいました。
会話を続けていくと、『家族が誰も来ないの。どうかしたのかしら?』 と不安そうに話されました。 『こんなこと一度も無かったのよ。(家で)何かあったのかしら?』 とても心配そうです。
『こんなに辛い (寂しい) 思いをしたのは初めてよ・・・。だって変だもの。どうして来ないのかしら?』 と何度も何度も繰り返されました。
ご家族のことから気をそらすため、話題を変えて昼食のことを尋ねると、キクさんは 『お昼? わたし食べたのかしら?』 と首を傾げました。(逆効果でした。)『わたし、みんな忘れてしまう・・・。頭が変なの・・・。』
(因みに、壁に貼付してあるメニュー表によると、昼食には 「ねぎとろ丼」 とデザートに「※チョコレートケーキ」が出たようでした。)
キクさんとの会話を聞いていたトシコさん(92才 女性)は、すかさず 『頭が変じゃなきゃ、こんな所に入ってないわよ!』 とホロー(?)しておりました。(哀しいアシスト・・・です。) そして、ご自分は 『チョコレートケーキ、美味しかったわ!』 と嬉しそうに仰いました。
※デザートの「ケーキ」は、その月にお誕生日を迎える入所者全員を祝うため、毎月20日位にお出ししているそうです。(配慮のある施設ですね。)
私が 『チョコレートは ‘若返り’ や ‘あたま’ に良いそうですよ。脳が活性化するんですって!』 と言うと、トシコさんは 『あらっ、じゃあ、たくさん食べなきゃ!』 と笑いながら応じてくれました。
一方、マリコさん(78才 女性)は何故かずっとおへそを曲げており、私がフロアーに到着した際に、何度もご挨拶をしたのですが、そっぽを向かれ続けておりました。(わたし、少々ショックでした・・。)
でも、帰り際に、お傍に行きお声をかけると、機嫌はなおっておりました。
介護士のFさん曰く 『あの人は一番先に自分に声をかけてくれないと僻む(ひがむ)のよ。むくれるの。』 と仰いました。(なるほど、78才の乙女心も難しいものなのですね。)
しかし、その後マリコさんは私がエレベーターに乗り込むまで、手を振り続けてくれました。
帰りがけに私は 『「蓄音機の会」 や 「落語会」など、ここで出来ればいいなぁ。』 と、あらためて思いました。
( 実施日:2017年5月20日(土) 14:00~15:00 )