2017年8月31日木曜日

『蓄音機・・・? 聴いてみたーい♪♪』

今日の6フロアーは、おじいちゃん、おばあちゃん達がたくさん座しており、
まさにオールスターキャストでした。
でも・・・、なんだか気だるい雰囲気が漂っております。なぜかしら?

その理由を前回の‘ハエ取りリボン工作’に続き、本日新たな‘段ボール工作’
(今回は薬入れとか)に挑んでいた‘遊び心いっぱい’の介護士Mさんが教えてく
れました。『みんな、昨日の「ゆしまの郷祭り」で ‘はしゃぎ’ 過ぎ疲れちゃったんですよ!』 と。

ハッとしました・・・! あれから1年も経ってしまったのですね。昨年、特別参加させて頂いた「ゆしまの郷祭り」からです。感慨深いです。
 
一方、今日もカズさん(103才 女性)は、飛び切りの笑顔で私を迎えてくれました。そして この日が月一回の回診日であったY院長先生に、さっそく私を紹介し始めました。戸惑うY先生。今回で3度目のご紹介でした。

私はさり気なく先生にご挨拶し、話をそらすために6Fフロアーでの実施を願っている「蓄音機の演奏会」についてお話をいたしました。すると、Y先生やお供の看護師さんはとても興味を示されました。

そしてカズさんは目を輝かせて我々の話に聞き入っています。他のお年寄り達も ‘聞き耳’ を立てておりました。

私としては早く皆さまに 「蓄音機での演奏」 を聴いて頂き、喜ぶお顔を見たいのですが、あくまでも ‘無償でのボランティア活動’ です。歯がゆいのですが、S氏のお返事を待つしかありません。

彼はとても忙しい方で、本職のほかに 「蓄音機」 を普及させる活動を、精力的にされております。そんなご厚意によるボランティアです。催促などできません。決して無理も言えません。私はひたすらご協力頂くS氏の日程調整を待つばかりでした。

そしてカズさんですが 『お久しぶりだわね。(来訪は) いつも土曜日だったでしょ?』 『忙しくて来られなかったの?』 と仰いました。
私が 『先月も伺いましたよ!』 とお返事しましたが、カズさんは 『・・・そうだったかしら?』 等とあまりご納得されていないお顔でした。

でも突として、『あなたは真面目よね。偉いわ! 雨の日だって、風の日だって、雪の降っている寒い日でも (何だか宮澤賢治のようですが。) 訪問して下さって。ありがたいわ!』 等と褒めて下さいました。

一方、キクさん(98才 女性)はご機嫌でした。私が聞いたことのない歌を‘ 鼻歌まじり ’ で歌っておりました。とても楽しそうです。私も聴き入ってしまい、つられて ‘ 鼻歌 ’ での輪唱をしてしまいました!

また 「蓄音機の演奏会」 の話を小耳に挟んだ年配の介護士さんが、興味深そうに『蓄音機での音楽ってどんな感じなの? やっぱり音が全然違うの?』 等と尋ねてきました。皆さま、興味津々なのですね!

黒一点のヨウジさん(91才 男性)ですが、相変わらずマイペース(?)で、ひとりテーブルに向かい 『がんばらなきゃ、頑張らなきゃ。』 としきりに唱えておりました。

今日も盛り沢山の一日でした。

帰りしな、個室のドアが空いていたので目を遣ると、ご体調が悪いのかフロアーには出て来られず、ご自分のベッドで横になっていた80代後半の女性と目が合いました。私が軽く会釈して手を振ると、相手の方もにっこり笑って手を振り返してくれました。なんだか私は嬉しい気分になりました。

( 実施日:2017年6月25日(日) 14:00~15:00 )





2017年8月29日火曜日

「蓄音機の会」とか「落語会」って開催できるかな? その2

帰途につき 『ぜひ 「蓄音機の会」 や 「落語会」 をゆしまの郷で・・・。』 と決意を新たにした私はさっそく行動をおこしました。

先ず 頼りになる友人に今後の ‘話の持って行き方’ などを相談し、そして傾聴の会 「ぞうの耳」 の代表、O氏や理事のMさんに ‘私の思い’ を伝えて開催の許可を得ました。

それから、私もその一員である「昼下がりの蓄音機の会」や「蓄音機の夕べ」の主催者の一人 S氏に連絡をとり、無償でのボランティアをお願いいたしました。(随分、厚かましいお願いでした。)

以下がS氏にお願いした内容です。
『・・・。今回 お尋ねしたいのは、 「交通費も出ず」 「完全なボランティア」 で施設において1時間くらい蓄音機の演奏をお年寄り達におきかせ頂けるかどうかです。虫のいい話で申し訳ございません。

ただ、私達の年代でも、蓄音機の‘音色’にあれ程 感動するのですから、お年寄り達はさぞかし喜ぶだろうと思ったのですが、如何でしょうか? ご協力頂けませんでしょうか。施設で、楽しみの少ない生活を送っていらっしゃるお年寄り達に、束の間でも 「楽しく、幸せな気分になって頂きたい。」 という思いでお願いする次第です。・・・。』

そのお返事は
『・・・。初回はお試しで、無料演奏会にご協力させていただきますよ。先ずは聴いていただきたいです。日程調整させてください。・・・。』 でした。

そして私は 『この度は、私の勝手なお願いにも拘らず、また全くのご奉仕にもかかわらず、お年寄り達に 「蓄音機の演奏」 をお聴かせ頂けるとのこと。本当にありがとうございます!』 とお返事をいたしました。

「蓄音機」が奏でる音楽(SPレコード)を聴いて、カズさんやヨウジさん等、お年寄り達がどんな反応をされるのか、私は想像するだけでとても楽しみになりました!

      ( 実施日:2017年5月20日(土) 14:00~15:00 ) 


2017年8月27日日曜日

「蓄音機の会」とか「落語会」って開催できるかな? その1

定刻にゆしまの郷に到着すると、事務所に施設長がいらっしゃいました。

折角なので、日頃から考えていた「施設で ‘蓄音機の演奏会’ や ‘落語会’ などを催すことは可能かどうか」を、思いきって尋ねてみることにしました。

施設長のNさんは 『6Fフロアー(現在 私が訪問している)でなら 構わないですよ。僕も蓄音機を聴いてみたいなあ!』 等とお返事を下さいました。
「実現できれば良いなぁ。」 と私は思いました。

6Fに着くと、風邪引きの方がいらっしゃるとかで、フロアーでは風邪ひき組と引いていない方々を分けて、少し席を離して座らせておりました。

最初に目が合ったキクさん(97才女性)の傍に行くと、キクさんは ‘にっこり’ と愛想笑いはして下さるものの、私のことは覚えていない(?)ようで、少々怪訝そうに私を見ておりました。

『こんにちは。』 とお声がけをし、私の名前が書いてある ‘ネックストラップ名札’ をお見せすると、『あら、わたし、前に (あなたと) 会ったことあるかしら?』  とキクさん。続けて 『わたし、このごろ頭が変なの・・。』 と覚束なげに仰いました。

そして 『最近、何でも忘れてしまうの。だから貴女のお話にも答えられないの・・・。』 と悲しげなお顔をなさいました。

会話を続けていくと、『家族が誰も来ないの。どうかしたのかしら?』 と不安そうに話されました。 『こんなこと一度も無かったのよ。(家で)何かあったのかしら?』 とても心配そうです。

『こんなに辛い (寂しい) 思いをしたのは初めてよ・・・。だって変だもの。どうして来ないのかしら?』 と何度も何度も繰り返されました。

ご家族のことから気をそらすため、話題を変えて昼食のことを尋ねると、キクさんは 『お昼? わたし食べたのかしら?』 と首を傾げました。(逆効果でした。)『わたし、みんな忘れてしまう・・・。頭が変なの・・・。』

(因みに、壁に貼付してあるメニュー表によると、昼食には 「ねぎとろ丼」 とデザートに「※チョコレートケーキ」が出たようでした。)

キクさんとの会話を聞いていたトシコさん(92才 女性)は、すかさず 『頭が変じゃなきゃ、こんな所に入ってないわよ!』 とホロー(?)しておりました。(哀しいアシスト・・・です。) そして、ご自分は 『チョコレートケーキ、美味しかったわ!』 と嬉しそうに仰いました。

※デザートの「ケーキ」は、その月にお誕生日を迎える入所者全員を祝うため、毎月20日位にお出ししているそうです。(配慮のある施設ですね。)

私が 『チョコレートは ‘若返り’ や ‘あたま’ に良いそうですよ。脳が活性化するんですって!』 と言うと、トシコさんは 『あらっ、じゃあ、たくさん食べなきゃ!』 と笑いながら応じてくれました。

一方、マリコさん(78才 女性)は何故かずっとおへそを曲げており、私がフロアーに到着した際に、何度もご挨拶をしたのですが、そっぽを向かれ続けておりました。(わたし、少々ショックでした・・。)

でも、帰り際に、お傍に行きお声をかけると、機嫌はなおっておりました。
介護士のFさん曰く 『あの人は一番先に自分に声をかけてくれないと僻む(ひがむ)のよ。むくれるの。』 と仰いました。(なるほど、78才の乙女心も難しいものなのですね。)

しかし、その後マリコさんは私がエレベーターに乗り込むまで、手を振り続けてくれました。

帰りがけに私は 『「蓄音機の会」 や 「落語会」など、ここで出来ればいいなぁ。』 と、あらためて思いました。

( 実施日:2017年5月20日(土) 14:00~15:00 )



 


2017年8月25日金曜日

27)【番外編】「回想法」講習会 その2 2016/11/26(土)

【質問方法や禁句】
  
  ① 質問は相手が答えやすいように、具体的な質問をする
  ② 無理に聞き出そうとしない
    過去の記憶が楽しいものばかりとは限らないので、質問をして相手が自ら進ん
で話すようであれば傾聴し、話したがらない場合には質問の内容を変える。
  ③ 間違いを訂正しない
     相手の語ったことが事実ではなくても訂正せずに聴く。大切なのは正確に思い出
すことではなく、過去の記憶をたどることにある。 

つまり、昔を思い出して皆で語り合うことで、「楽しい気分」「幸せな気分」になることをケアに活かすのです。楽しかった時代を思い出す事により、楽しい時間が蘇るのですね。

回想時は相手を静かに落ち着かせて集中させ、急がずゆっくり時間をかけ行うことが重要だとのことです。自然にわき起こる感情を大切にして、無理に言わせようとせずに、黙って観察していることが肝心のようです。

特に、認知症の方への回想法には優しさが大切で、五感を刺激してゆっくり話したり、反復したり、やさしく説明して理解を促すようにすると良いとのことでした。

また、言葉だけではなく、相手に仕草などで表現して貰うことも大切とのこと。
相手の目線に合わせ、顔の表情から「何を感じているか」を読みとり、相手が伝えたい言葉を補ってあげるのも良いそうです。 
つまり、その方の気持ちを大切にし、 ‘こころ’ を聴くということなのですね!

【余談】 恩師であるI 先生が晩年に認知症になりました。

J大学の理事長をご退任される少し前に、I 先生
のお顔を見るため大学病院内にある理事長室に伺いました。励ますためです。
日頃より、先生の奥様から 『○○ちゃん(私のこと)、わたくし(奥様ご自身)のことは良いから、 大学に行ったら、おじいちゃん(I先生のこと)の顔を見に寄ってあげてね!』 と頼まれておりました。 

先生は所在無げにポツンと応接室に座っておられました。長年、傍らの秘書室で目の当たりにしていた‘ 強くて肝の据わった先生 ’とは異なり、落ち着かない様子で、不安げでもあり、とても寂しそうでした。

I 先生は私の顔を見るとにっこりされました。そして、この日 ご自分の脈が速い(ご退任の不安とストレスからでしょうか?)とかで、私の脈を見ると仰いました。
後にも先にも名医に脈を取ってもらったのは初めてでした!
『あんたの方が(脈が)速いから、儂(わし)は大丈夫だ!』 と少し安心されました。
そんなことで恩師に安心して頂けて、わたしは光栄(?)でした! 



スター教授で、政治家や超有名芸能人、そして数々の文化人を診ていらした I先生は、お茶目でウイットに富み、また 「一を聞いて十を知る」 方でした。

私が持っていた ‘野球観戦用の双眼鏡’ をご自分も欲しかったとかで、学会出張の際、飛行機の座席前のポケットに挟んである通販カタログを持ち帰られ、秘書に注文させておりました。
 『あんたの(持っている双眼鏡)より、数倍よく見えるぞ!』 等と自慢しておりました。

本来の先生はこちらが多くを語らなくても、相手の云わんとすることを察し、的確な判断を下す方でした。本当に凄い先生でした。そういう場面を私は何度も目にしました。

この日、私は日頃から何度もお聴きしていた「(I 先生にとって一番良い時代と思われる)シカゴ大学赴任時代」に話を向けてみました。
若き新進気鋭の I 先生が精力的にご活躍されていた時代です。

すると先生の顔が見る間に明るくなり、にこやかになって頬を紅潮させました。そして何度も何度も・・・、シカゴ時代の話を得意げに繰り返しお話されました。私は時の経つのも忘れ、ただただ聴き入っておりました・・。


今思うに、これは回想法の一つだったのでしょう。
無自覚とは言え 「( I 先生にとって)楽しい時間と自信を取り戻すお手伝いができ、本当に良かった。」 と私はあらためて思いました。

私にとっても忘れられない とても濃密な時間となりました。

そして、この歓談がご存命中の I 先生との ‘最後の面会 ’ になりました。


【水飛沫オンステージ】
photo: (c) Hiro K
http://ganref.jp/m/md319759/portfolios








2017年8月15日火曜日

26)【番外編】「回想法」講習会 その1 2016/11/26(土)

傾聴の会主催の「※回想法」講演会に出席しました。
 
※「回想法」とは1960年代にアメリカの精神科医ロバート・バトラー氏が提唱した心理療法で、当初は高齢者のうつ病治療として行われていたが、後に認知機能が改善することも明らかになり、認知症のリハビリとしても実践されるようになった。現在、日本でも介護施設などで取り入れられている。
 
【回想法の効果】
 
認知症の人は少し前のことは記憶しづらいが、昔のことは覚えていることが多いので

回想法は有効である。昔のことを思い出そうとしたり、人と「話す」「聞く」といったコミュニケーションを図ることで、自然に記憶力や集中力などが養われ、脳が活性化されて認知症の進行を遅らせることができる。
 
つまり、過去の懐かしい思い出を語り合ったり、誰かに話したりすることで脳が刺激されるのである。また、
蘇った思い出が楽しいものであればあるほど、精神状態を安定させる効果があるようで、過去を振り返ることにより、失った‘ 自信 ’を取り戻せることもあるそうだ。

【使用する道具など】
①五感を刺激するもの
   :玩具[お手玉、おはじき、人形、けん玉、独楽(コマ)、めんこ等]
   :庭に植えてあった果物(柚子、柿、イチジク等)
②昔使っていたもの
③写真・地図・旅行のパンフレット等
 
確かに「お手玉」等は
「触覚」や‘ 綺麗な模様 ’が五感の一つ「視覚」をも刺激しますね。 
 

そうすると・・・、私たちの世代で五感を刺激する「玩具」「道具」とは一体何だろうかと
不安になりました。少なくとも、五感のうち「触覚」を刺激するようなものは思いつきません。 ダッコちゃん? オセロ? それとも ‘ スマホ・・・? ’ になるのでしょうか。
 
また、上記の他に 子供の頃 (1920~30年代など) 庭に植えてあった柚子などは、その触覚や匂い等で当時の感覚がよみがえるそうです。
 
③ に関しては、先日 私が持参し入所者にお見せした「観月祭」(お月見)のチラシや写真等も 、『回想法』 の一つだったのだと合点がいきました。


イエローナイフ アイスロード(氷の彫刻)

 

2017年8月5日土曜日

25) やっぱり「男前」が好き?

敬聴の定刻時間、14時に6Fフロアーに着くと、壁に貼られたキクさん(97才女性)のお習字が目に飛び込んできました。お題はなんと!「男前」でした。
 
キクさんに『(キクさんは)やはり男前の方がお好きですか?』と尋ねると、顔をしかめて、『顔なんて付いていればそれで十分よ! なまじ男前だと浮気されそうで嫌だわ。』とのお返事でした。なるほど!
 
一方この日は、顔なじみになった介護士のFさんより、職場の愚痴や悩みを打ち明けられました。
 
Fさんは『介護の仕事はきれい事では済まされないの。たとえばご家族が施設を訪れた時に、たまたま介護職員が一人で大勢に応対していて、つい大声を出し注意をしていると、それを聞いた家族の方が‘暴言’と誤解してしまうこともあるのよ。そんな苦情を若い介護職員が真に受けたり、時に、入所者自身やその家族が実情を理解せずに文句を言ったりするので、辞めていく者が多いのよね。給与は安いし・・・。』など等と。
(もちろん私は言葉もありませんでした。)
 
一方、マリコさん(78才女性)は、まだ私のことを『草月の先生!』と呼びます。『こんな所に草月流の先生に来て頂いてもったいない!』と。

その度に私は気恥ずかしい思いがします。
 
帰りがけ、私が皆さんに別れのご挨拶に手を振ると、二人のおばあちゃんからニコニコされました。
(介護士さんが言う)普段は口の悪いマツさん(90才女性)からも 『ご苦労さま!』 等と労われました。嬉しくなりました!
 
でも、みんなと親しくなり、何となく‘慣れ’も出始めてきたようにも感じました。
原点にかえり、「こころを傾けて、その方の思いを受けとめねば!」と、私はあらためて心に誓いました。
 
(実施日:2016年11月23日(水) 勤労感謝の日 14:00~15:00)



直島 ベネッセハウス オーバル