2020年6月15日月曜日

97) 企画展「護国寺とぶんきょう」と東寺講堂の立体曼陀羅 その1

先日 faceboookで【7日間のブックカバチャレンジ】というイベントがありました。チェーンメールの一種です。「着物バトン」というのもあったそうです。こんな時期ですから 皆が繋がりを求めているだと思いました。

その6日目(6冊目)にご紹介させて頂いたのが、梅原 猛著『梅原猛の授業 仏教』でした。東寺境内にある洛南中学校で講義した 12回の内容を纏めた本で、表紙は私の大好きな「東寺講堂の立体曼陀羅、国宝の金剛宝菩薩坐像」です。

この本と出合った4年後に 私は毎週土曜日 文京区内の大学に社会人として 5年(初級・中級・上級 講座)ほど通いました。子供の頃から神社仏閣、特に寺院と仏像に興味を持っていたからですが、*インタープリターという文京区独自の資格を得るためでもありました。そこで地域の文化財(古文書や建築、絵画や彫刻〔仏像〕)全般を学びました。ゼミにはもちろん仏像を選びました。

*(文の京地域文化)インタープリターとは、文京区の文化遺産(地域の歴史・美術・建築など)を分かりやすく区民の皆さまに伝える活動をする者のことです。私はその第一期生ですが、最近は学ぶ大学も変わって隔年募集となり 講座期間も半年になったそうで、主に文学(稀に歴史民俗)を学んでいるようです。

我々インタープリターが展示や運営に携わった 企画展の第一弾が「護国寺とぶんきょう」でした。文京区あげての大掛かりなイベントで、20088月30日~9月15日まで開催されました。(延べ来場者数は4,500名)

因みにその後も「江戸時代に生まれた庶民信仰の空間ー音羽と雑司ヶ谷ー (鬼子母神展)」(2010年9月24日~10月5日まで)等があり、私も企画に関わりました。

さて、今回はその企画展「護国寺とぶんきょう」での話です。或る方に(今 思えば)敬聴のようなことをさせて頂きました。

会期中 私たちインタープリターは交替で護国寺につめ、ご来場者に護国寺の建造物や絵画・仏像など文化財の説明や境内の案内役も致しました。その会期中盤に、60代後半の白装束の男性に私は説明を求められました。何か曰くのありそうな方で 少々 私は身がすくみました。

一通り 今回の展示物についてご説明し、特に私が関わり、文化庁の文化財調査官の川瀬由照先生(現在、早稲田大学文学部教授)と共に実地調査をした木造地蔵菩薩立像は念入りに説明させて頂きました。

その他 真言宗豊山派の寺「護国寺」の正式名称である「神齢山悉地院 護国寺」の院号  ‘悉地’ の意味(梵語の siddhi で成就の意。密教で修行によって完成された境地、悟りのこと。)や徳川五代将軍 綱吉の生母、桂昌院由来の「玉の輿」の話(護国寺は綱吉が桂昌院の祈願寺として建立)そして本尊 如意輪観世音菩薩像のご説明等など。

ご説明が終わっても その男性は名残惜しそうに 何かもの言いたげな目をされ・・、そして、訥々(とつとつ)とご自分の身の上話をし始めました。しかも 涙ぐみながらです。さて、私はどう応えたら良いのか・・困りました。