2021年12月25日土曜日

134) 【徒然に】伊予内子の和蠟燭と洋画家 高島野十郎

伊予内子の大森和蠟燭屋さんに行ってきました。念願でした。今回の愛媛の旅で訪れたかった場所の一つです。

内子には大江健三郎氏の生家があり前々から興味がありました。そして内子の名産品である 江戸時代から続いている和蠟燭は、是非ともその製造過程を見学したいと思っておりました。木蝋の精製の途中でできるのが生蝋(きろう)。この生蝋をつかってできるのが和蝋燭です。

和蝋燭の灯りは、ほのかであり優しい色合いです。周辺にゆたかな時間がながれる気がしました。 炭火でゆっくり蝋をとかし、一本一本、手間と時間をかけて作るそうです。職人さんの完全な手しごとです。蝋燭はうすいベージュ色。心がなごみます。

私がこの和蝋燭に興味を持ったきっかけは「蝋燭の画家」として知られる洋画家・髙島野十郎(たかしま・やじゅうろう 1890-1975)を知ってからです。

20年ほど前に 私は和太鼓奏者の林英哲氏が※高島野十郎をテーマに作曲した組曲『光を蒔く人』を聴きました。舞台に野十郎の「蝋燭の絵」を映し出し 林英哲氏が和太鼓を叩いたのです。衝撃的でした! 以来 高島野十郎は私の大好きな画家の一人となりました。

※高島野十郎は一心に写実を追求し 隠遁者のような孤高の人生を送りました。自らの理想とする絵画をひたすら求め続けた生涯です。

『雨 法隆寺塔』など 数々の代表作がありますが、トレードマークともなった『蝋燭』(初期から晩年まで描き続けた連作)は、彼が「蝋燭の画家」と称され 他の追随を許さない卓越したものです。

サイズは 殆どがサムホール (約25×16㎝)という極めて小さい画面であり、その中心に「一本の蝋燭」が描かれています。ただ 炎の色合いや輝き また軸の太さや長さはそれぞれ異なり、ひとつひとつが独特の雰囲気を醸し出しています。

その「蝋燭」の作品は 個展で発表されることがなく、親しい友人や知人に感謝の気持ちとともに手渡された贈り物であったそうです。

一度、高島野十郎の「蝋燭 23点」が一堂に会した展覧会が 久留米の石橋美術館 (2016年10月1日より久留米市美術館に移行) で開催されたことがありましたが、私は仕事で行けませんでした。とても残念な思いをしたものです。


以前から私は 高島野十郎が描いた「蝋燭」は (内子の) 和蝋燭だろうと推測しておりました。和蝋燭ならではの たえず変わる ‘オレンジ色の炎のかたち’ と ‘ゆらぎ’、そして荘厳な美しさ 等など。今回 現物を手にし、それが確信に変わりました!

織部焼 一海窯の盃

大森和蝋燭

六代目・大森太郎氏