2020年5月15日金曜日

95) 傾聴フォローアップ研修 その3 二人の心理学者「アドラー」編

次にアドラーです。
※2アドラーは フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」の一人であり、アドラー独自の「個人心理学」は 日本ではその創始者の名をとり「アドラー心理学」と呼ばれている。日本でも2014年の「嫌われる勇気」(岸見一郎・古賀史健の共著による“アドラー心理学”の解説書)をきっかけに広く知られるようになった。「自己啓発の父」とも呼ばれ社会現象になり 今も注目を集めている。

その学説には介護にも役立つ部分があるとのことで私も 早速 読んでみました。
アドラー心理学の基本的な考え方(理論)の概略は以下のとおりです。
*アドラー心理学は広汎にわたりますので、ここでは入門編をご紹介致します。

①人間の行動には目的がある(目的論):
人は過去の経験に囚われ 自分が傷つかないように解釈して自分を納得させている。アドラー心理学はこの過去の原因となった出来事を問題から切り離し、意識を未来志向(目的)に変えることで前向きな行動が出来るという理論。
②人間を分割できない全体の立場から捉えなければならない(全体論):
全体論とは「意識と無意識」「感情と理性」「心と体」は分離出来ないものという考え方。
③人間は自分流の主観的な意味づけを通して物事を把握する(認知論):
認知論とは同じ出来事を経験しても感じ方は人それぞれ違うという考え方。独自の解釈で多様性がある。つまり考え方次第で結果を変えられるという事。「事実」と独自に感じた「認知(感情)」を区別するのが大切。
人間は自分の行動を自分で決められる(自己決定性):
アドラー心理学の自己決定性とは自分の人生は自分で決められるという考え方。「出来事をどのように捉え、解釈し 受け止め 行動するかは 自分次第。」自己啓発によって自分を高めるとする教え。
人間のあらゆる行動は対人関係である(対人関係論):
人の行動・感情はいつも特定の誰かに向けられ影響しあっているという考え方。全ての悩みは対人関係の悩みであるとする。孤独や寂しさを感じたり、他者と比較して劣等感を持ったり コンプレックスに悩んだり。また自分を大きく見せたり卑屈になったり等など。何か行動を起こした時に「周り(相手)にどう思われるか」等と余計な考え方が邪魔をして正しい判断が出来なくなる。この余計な考えを取り払うことが大切。

上記のうち高齢者の介護や傾聴において最も心に留めておきたい項目は⑤です。研修では「勇気が高まる基本の言葉」として「ありがとう(感謝)」「嬉しい(感情)」「助かる(貢献感)」の3つの言葉が挙げられていました。これらは高齢者が「あなたは大切な人!」と感じる言葉だそうです。

人間は他人から「ありがとう」という感謝の言葉をもらうと「自分は役に立った」「貢献できた」と感じ、自らの価値を実感でき勇気が持てるのだそうです。

そう言えば、ゆしまの郷のキクさん(101才 女性)は〝おしぼりたたみ〟(このブログ の77)参照。)が得意ですが、お褒めすると とても嬉しそうなお顔をなさいます。「人の役に立っている」という貢献感なのでしょうかね。

アドラーの説によると、人に必要とされるのは他者への貢献であり、喜びと幸福感をもたらすそうです。また貢献できなくても価値が無いということではなく、人は生きているだけで価値があり 他者への貢献になるそうです。従って目に見える貢献でなくても「*貢献感」を持てれば良いのだそうです。


*貢献感とは「自分は誰かの役に立っている」という自分の感覚であり、貢献感を持てれば自分に価値があると思える。そして自分に価値があると思えれば対人関係の中に入っていく勇気が持てる。それが幸せにつながると言うのですが。
(この部分は今一つ私には分かり難いところでした。)


因みに、アドラーは欧米での評価に比べ 日本では知名度が低かったようですが、近年になり 伊坂幸太郎氏が小説『PK』で また石田衣良氏が小説『美丘』でアドラーの教えに言及するなどで 多方面からの支持を集めているようです。

そしてアドラー心理学を解説した『嫌われる勇気』(岸見 一郎/古賀 史 著, ダイヤモンド社)はベストセラーとなり ドラマにもなったそうです。

       (2020年 2月11日(火) 13:30~16:30)

ナズナ

photo: (c) Hiro K
http://ganref.jp/m/md319759/portfolios