2020年2月25日火曜日

90)ゆしまの郷 クリスマス会 『わたしは住み込み入所よ! 』

この日は「ゆしまの郷 クリスマス会」とのことで、午前と午後の二部に分けて催し物があったようです。

6階に着くと、キクさん(101才 女性)をお見かけしたので「今日はクリスマス会だったそうですね! サンタクロースにはお会いになりましたか?」とお尋ねすると、「えっ、クリスマス会だったの? あらっ、全然 知らなかったわ。」と戸惑うキクさん。既にお忘れになっていらっしゃいました。(余計なことを訊いてしまいました。)

そこで 私はキクさんの隣のイスに腰を掛け「あそこの壁に貼ってある メニューによると 今日のお昼はクリスマスバージョンの ‘もみの木ハンバーグ’ とピラフのようでしたよ。美味しかったですか。」とやさしく言ってみると、キクさんは目を丸くされました。

(この話もダメだったかな。) でも・・、キクさんの目の前には、先ほど配られた‘クリスマスプレゼント’の靴下がありました。

話題を変えるべく目を遣ると、キクさんは膝に 施設からのプレゼントである ‘100才祝いのネーム入りひざ掛け’ をかけていらしたので、
「キクさん、女性にお年をお尋ねするのはたいへん失礼ですが、おいくつになられましたか?」とお訊きすると、即座に「50才!」とお答えになりました。

すると、最近入居されたというアサコさん(91才 女性)が透かさず、
「そんなわけないじゃないの。」と横槍を入れました。

「あら、そうだったかしら? 幾つかしら・・、わたしは。」そして「頭がバカになっちゃったわ。分からない。」とションボリ下を向くキクさん。(またしても悪いことを伺ってしまいました。)

私が「今年たしか101才になられましたよ。」とやんわりお伝えすると、
「えっ、そんなに?」と仰いました。
慌てて私が「でも、皆さま、そんなにお年は変わりませんよ。」と執り成すと、

「えっ、あなたも?」と言われました。
「まだ、100才にはなっておりませんけれどね。」と冗談でかえすと、
「そうでしょう、だって、まだ お若いもの!」と笑いながら仰いました。
少しはご気分も良くなられたようで、晴れやかなお顔になりました。(良かったです!)

このゆしまの郷も随分とメンバーが変わりました・・・。仕方ないですかね

敬聴を終える前に 私はあらためて (先程 キクさんとの会話に口をはさんだ) 新入居のアサコさんに 自己紹介を兼ねてご挨拶をいたしました。
すると、アサコさんは「私はね、住み込みでここに来たのよ!」と胸を張って仰いました。

        ( 2019年12月21日(土) 14:00~15:00)






2020年2月15日土曜日

89)老人ホームで家族そろってお正月?

どなたのお話が聴けるのかワクワクしながら施設に向かいました。
ここは都内でも屈指の超豪華なK介護付き有料老人ホームです。

この施設にはファミリー向けのゲストルームが用意されており、希望すれば
(もちろん有料のオプションだそうですが)ご家族と一緒にお正月を迎えることができるそうです。もちろんお正月の特別料理にて。凄いですね。

さて、今回の敬聴も‘ご自身のお部屋は3階にある’と言う お喋りなサトさん(82才 女性)の独断場でした。一通りご自分の苦労話を終えると、今度は4階の方々のお名前のほか 年齢や出身地、また家族構成やバックボーンまで教えて(?)下さいました。(個人情報の極みでした。)

そして側にいらした カツコさん(85才 女性)に「あなたはいくつ(何歳)だったっけ?」等とラフに訊き始めました。すると・・、普段おとなしくて物静かなカツコさんは、サトさんを窘(たしな)め始めました。「自分の年を言わずに、他人に年を尋ねるのはルール違反よ。」と。

そして・・、私に向かって頭(かぶり)を振りながら「いろんな人がいるのね。」と小声で仰いました。

(大きな会社の会長夫人である)カツコさんは「(生きていて)辛いことが全く無かった人など いないわけで、それをわざわざ人様に言うのはいただけない!」と毅然として仰いました。

一方、お隣に座っていらした‘元本郷小町’のトキさん(83才 女性)は、私を見てにこにこと微笑んで下さいました。

見渡してみると、先日お話を伺ったサチさん(84才 女性)のお姿がみえません。すると・・、察したかのように サトさんが「サチさんは いま 入院中よ。」と教えてくれました。何でもご存知です、サトさんは。それにしても、サチさんが心配です。

また、J大学病院に通院するため入居されたという コウタロウさん(78才 男性)のお顔も見えません。介護士さんにお尋ねすると、コウタロウさんは 最近ご病気になり、都内の病院ではご家族の看病が難しいので、施設を退去し地元の病院に移られたとのことでした・・・。

少しづつ・・ですが、入居者さんが変わっていくのには寂しいものがあります。感傷にふけっていると、3階のご自分のお部屋に戻る カツコさんから握手を求められました。

K有料老人ホームでの敬聴を終えて帰宅すると、ゆしまの郷のカズさん(106才 女性)の姪御さん Tさんからお電話を頂きました。ビックリしました。ちょうど、カズさんを思い出していたからです。

Tさんは12月2日に開催され私が初出演した「第12回 朗読アラカルト」にも、お足元の悪いなか お越し下さいました。その時のご感想やいろいろなお話をされた後、

「伯母がいつも元気なのはあなたのせいね! ありがとう。」「あなたが(伯母の)話を聴いて下さるから、長生きしているのね。感謝しています。」とのお言葉を下さいました。

「いいえ、私の方こそ カズさんに出会えて有難かったです。感謝しています。」とお応えしました。カズさんとの邂逅は 私にとり とても意味のある“出来事”でした!

        ( 2019年12月11日(水) 16:00~17:00 )


帝釈天騎象像   東寺