一般的に認知症の方は、症状の進行と共におしゃれ心がなくなり、外出せずに薄暗い部屋でぼんやりとする時間が次第に増え、服装を気にすることなく過ごすようになりがちとのこと。
そして全体的に暮らしの中で‘色’に対する興味も薄くなるようである。更に高齢者施設等では環境の変化が乏しく、自分で服などの「色」を選ぶことが無くなっているようである。
しかし眼から入る刺激が低下すると、脳の活性も落ち、認知機能にも悪影響が及んでしまうとの事。「色」を意識することは、気持ちにも彩りが出てくるようである。
今回の講習は「色」を見て選ぶことにより、視覚を刺激しイメージを膨らませ 「思い出」やその時の 「気持ち」 を蘇らせて 「話をする」 きっかけ作りをすると言う内容であった。
※クオリア(qualia)とは、個人の感覚的、主観的な経験に基づく独特の質感のこと。
例えば 「‘青空’のような清々しい感じ」 とか 「‘フルートの音色’のような高く澄んだ感じ」 等など。
然しながら自分がリンゴを見た時に感じる 「赤」 (その人の感じる‘赤’がクオリア)の感覚は、他の人が感じる 「赤み」 とは限らない。あくまでも個人の主観と感覚なのである。
実践方法:
①色カルタをテーブルに並べる。
参加者のお年寄りたちに、色カルタ(色の種類は少なくとも100色以上が望ましい)を広げる。 (お年寄りたちに色カルタを広げるのを手伝って貰ってもよい。)
②リーダーが読み札 ( 読み札には 『初恋を色に例えると?』 等とテーマが記載 ) を読む。あるいは単純に 『赤いカルタを取って下さい!』 とか 『黒を取ってください!』 等と言っても良い。
③参加者はその言葉から連想した色を取る。 ( 「赤色」 でも様々な 「赤色」 を用意しておく。 )
④何故その色を選んだか、色のイメージについて会話をする。
※②~④を繰り返して参加者との会話を続けていく。
大切なのは参加者との会話を楽しむことで、相手の話をよく聴き、よく話をさせてあげる事。そして参加者の様子に気を配り、話は一人ひとり丁寧に聴くこと。
またその際、必ず一人ひとりの名前を呼んでから話しかけるようにする。
このゲームは早さを競う必要がないので、ゆっくり考えてのびのび話して頂く事。
具体的には、ゲームの参加者にテーマ毎に100色位ある色カルタ(カード)から一枚選んで頂き、その方の「状況」や「気持ち」を想像しながら選んだ理由を聴いていくのである。
この講習を通して勉強になった事は、私が今まで 「 ‘色’ は共有できるもの」 と思っていたことが、色の見え方や感じ方には個人差があり、また 「色」 にまつわる様々な経験によっても大きく異なる事を知ったことです。
例えば 『青春時代』 というテーマでも、楽しい思い出がある人は 「明るくキレイな色」 を選び、イジメや嫌な思い出ばかりだと 「暗く濁った色」 を選ぶ傾向があるという事でした。
つまり、その時の状況により 「色」 に対する認識やイメージは千差万別で、かなり異なってくるという事です。
たしかに 『青春時代』 を 「黒」 と例えた方もお出ででしたが、その理由を尋ねると 『学ランの 「黒」 です。』 というお答えでした。
「黒」 は暗くて悪いイメージというのは、余りにもステレオタイプ過ぎますね。 (反省です!)
主な効果:
①忘れていた記憶を取り戻すことがある。
②認知症の方の表情がイキイキとしてくる。
③認知症の方の状態も安定してくる。
④参加者の 「人生ものがたり」 を知ることにより、介護者のケアの質も変わってくる。
以上でした。
京都造形芸術大 はな緒付きスニーカ― |