先程からテーブルに伏せって、居眠りしていたヨウジさん(90才男性)も、写真をお見せすると、寝ぼけ眼(まなこ)で照れくさそうなお顔をなさいました。
その後、普段はほとんど声も出さず、辛そうに目を瞑っているトモコさん(92才女性)にも、しゃがんで軽く肩に手を触れ、お声掛けをして写真をお見せすると、トモコさんはゆっくりと目をあけ、ご自分の写真を見つめました。
そして・・・、声にならない声を唇から漏らし、涙を流し始めました。
その写真にはとても綺麗なトモコさんの笑顔が写っておりました。
敬聴終了時刻になると、皆さまに 『帰らないで!』 とお願いされました。
そしてカズさんからは 『今度はいつ来るの?』 と尋ねられました。
『来月にまた来ますね!』 とお答えすると、『じゃあ、指切りして!』 とせがまれました。来所を待ち望んでいて下さり、人恋しくて寂しいのだと思いました。
先程のトモコさん(いつも声を発せず目を瞑り、お身体が硬直しているので食事は介護士さんによる介助)にも、帰り際に 『また来ますね!』 とお声をかけた時、驚いたことにトモコさんは目をパッチリ開けて、やっと聞き取れるような微かな声で 『(今日は)いつ来たの?』、『(今度は)いつ来るの?』 とおききになりました。
私がトモコさんのお声をもっとよく聴きとれるように顔を近づけた時、かすかにミルクの匂いがしました。おやつのヨーグルトの匂いだったのでしょうか。
それから思いがけない事が起きました。トモコさんは動かないはずの右手を、首に掛けていたお食事用エプロンから出し、私の手を握ったのです!予想以上の力強い握手に私はビックリしました。
その上、いつまでも離そうとしません。お顔をみると涙を浮かべて物言いたげに私を見つめておりました。
その様子を傍で見ていた介護士さんもビックリされ、『こんなに積極的な行動をするトモコさんは(入所以来)初めて見たわ!』 と仰いました。
(実施日:2016年10月9日(日) 14:00~15:00)