2017年7月25日火曜日

24)(しょうしょう余談)プライド!

私が施設を訪問する午後2時になると、カズさん(102才女性)が車椅子をたくみに操りながらお出ましになります。まるで私の到着をどこかで見ていらしたかのようです。
 
そしてご挨拶を交わすと、カズさんはその日 新聞で読んだ記事の話やフロアーの方々の近況を教えてくれます。でも、時にはちょっと首を傾げるお話や思い違いも含まれております。
 
『今は国会中(予算委員会)でしょう。たいへんね!あなたも忙しいでしょう。』 と。

わたし? 「ポカーン。」
カズさんは私のことを安倍晋三総理の秘書だと思い込んでいるのです・・・。
 
母も認知症でした。
当時、自宅に来て下さっていたヘルパーさんからこんな話をききました。
 
或る日のこと、母はヘルパーさんに 『(今はこんな風だけど・・)私だって昔はきれいな着物をきて、いろんな所に出かけたのよ。』 と言い、お嫁入り道具に母の長兄から買ってもらった自慢の桐箪笥から、自分の着物をすべて出して、テーブルに広げて見せたそうです。

(驚きました!痩せ細った母のどこからそんな力が湧いたのでしょうか。)
 
『娘時代 ( 若くて元気だった頃 ) にはこれを着て、お茶会にも行ったのよ。』 と誇らしげに話したそうです。
悲しくもあり愛おしくも感じました。娘の私には一度も見せたことのない姿でした。
 
「認知症の方への理解と配慮。そしてその方のプライドを守ることの大切さ。
自尊心を傷つけないように丁寧に接する。」 それ以来しっかり心に刻んでおります!
 
 (実施日:2016年10月9日(日) 14:00~15:00)






2017年7月15日土曜日

23)不自由になった手から握手を求められた!

お年寄りたちは 「ゆしまの郷祭り」の際、私がお撮りしたご自分の写真を、嬉しそうに見ていらっしゃいました。『あらっ、これ私?』 等と言いながら満面の笑みでした。
 
先程からテーブルに伏せって、居眠りしていたヨウジさん(90才男性)も、写真をお見せすると、寝ぼけ眼(まなこ)で照れくさそうなお顔をなさいました。
 
その後、普段はほとんど声も出さず、辛そうに目を瞑っているトモコさん(92才女性)にも、しゃがんで軽く肩に手を触れ、お声掛けをして
写真をお見せすると、トモコさんはゆっくりと目をあけ、ご自分の写真を見つめました。
そして・・・、声にならない声を唇から漏らし、涙を流し始めました。

その写真にはとても綺麗なトモコさんの笑顔が写っておりました。
  
敬聴終了時刻になると、皆さまに 『帰らないで!』 とお願いされました。
そしてカズさんからは 『今度はいつ来るの?』 と尋ねられました。
『来月にまた来ますね!』 とお答えすると、『じゃあ、指切りして!』 とせがまれました。来所を待ち望んでいて下さり、人恋しくて寂しいのだと思いました。
 
先程のトモコさん(いつも声を発せず
目を瞑り、お身体が硬直しているので食事は介護士さんによる介助)にも、帰り際に 『また来ますね!』 とお声をかけた時、驚いたことにトモコさんは目をパッチリ開けて、やっと聞き取れるような微かな声で 『(今日は)いつ来たの?』、『(今度は)いつ来るの?』 とおききになりました。

私がトモコさんのお声をもっとよく聴きとれるように顔を近づけた時、かすかにミルクの匂いがしました。おやつのヨーグルトの匂いだったのでしょうか。

それから思いがけない事が起きました。トモコさんは動かないはずの右手を、首に掛けていたお食事用エプロンから出し、私の手を握ったのです!予想以上の力強い握手に私はビックリしました。
その上、いつまでも離そうとしません。お顔をみると涙を浮かべて物言いたげに私を見つめておりました。
 
その様子を傍で見ていた介護士さんもビックリされ、『こんなに積極的な行動をするトモコさんは(入所以来)初めて見たわ!』 と仰いました。 

(実施日:2016年10月9日(日) 14:00~15:00)


プリザーブドフラワー


2017年7月5日水曜日

22)「観月祭」の写真と『せんせい!』コール

今日は6月に催された「ゆしまの郷祭り」の時の皆さんの写真と、今年(2016年) 浅草で復活した「観月祭」(9月15日 お月見の会)で、私がステージ上に生けたススキの写真やチラシを持参し皆さんに見て頂きました。

※先ず介護士さんに「観月祭」のチラシや活け花の写真をみて頂き、皆さんにお見せして良いかの承諾を得ました。

「観月祭」でステージ上に活けたススキの写真は壮観だったようで、皆さまからお褒めの言葉を頂きました。やはり女性はお花がお好きなようです。顔をほころばせ喜んで見て下さいました。

また「観月祭」のチラシにも興味を示され、なかにはパンフレットを離さず、食い入るように見つめていらした方もお出ででした。遠い昔を思い出しているようでした。


マリコさん(78才女性)は『お花の先生(私のこと)に、こんなところ(施設)に来て頂いて勿体ないわ!』と仰いました。 因みにマリコさんは、それ以来、私を『せんせい!』と呼ぶようになりました。

そして『お月見の時にはキレイな着物をきて、美味しいご馳走を頂くのでしょ!』とも仰いました。マリコさんはその様なご経験をお持ちなのかもしれないと私は思いました。

一方、102才のカズさん(女性)は、私のことを『○○ちゃん』と親しげに呼びはじめ『(お花は)何流?』等とお尋ねになりました。


『活けた花や撮った写真には貴女のサイン(雅号?)を添えなきゃダメよ!』と助言までして下さいました。恐れ入りました!

そのうち何人かが『十五夜お月さん』を口ずさみ始めました。予想以上の反応に私は驚きました。


また、お年寄りたちは「スカイツリー」が夜にライトアップされている事をご存知ありませんでした。そうなんです。施設では夜間の外出は出来ないからでした。

皆さま、色とりどりに変化した「スカイツリー」の写真を子供のように感心して見ていました。

(実施日:2016年10月9日(日) 14:00~15:00)


観月祭1

観月祭2