職員さんから4階でのグループ傾聴を依頼され、皆さまにご挨拶をしていると、息をきらして2階から上がってきた介護士さんに「昨日入居された2階の方が、話し相手がいなくて淋しいと仰っていますので2階でお願いします。」と言われました。
私は慌てて4階の方々に「ごめんなさい。後でまた来ますね。」とお詫びして、急いで 2階に降りました。
カウンター席で紅茶を召しあがっていたその方は、カツコさんという85才の女性でした。不安げな眼差しで 少々 他人に対して警戒心が強いように見えました。人見知りなのかもしれません。介護士さんに紹介され、私はカツコさんのお隣に着席いたしました。
なるべく ゆっくりとした口調で、にこやかに 「初めまして○○と申します。今日はお話を伺わせて頂きますね。よろしくお願いいたします。」とご挨拶すると、 カツコさんは少し‘はにかみ’ながら 私の方にお顔を向けました。(何からお話をお聴きしたら良いかしら?)
「昨日、ご入居されたのですか。」とお尋ねすると、 カツコさんは戸惑われ、介護士さんに助けを求めるように目を遣りました。 (うーん、困ったなあ。お話を伺う糸口は何にしようかしら ・・・。)
ふと目を遣ると、カツコさんの爪にはライトコーラル(赤みを帯びた肌色のようなピンク色)のマニキュアが綺麗に塗ってありました。 「きれいな爪ですね。そのマニキュア、素敵です!」と言うと、 少し顔がほころび、カツコさんは両手を少し広げ、私に目を向けました。
「これは・・ね。昨日 ここで(この施設で)資生堂の美容部員が塗ってくれたの。でも、私は いつも 銀座のサロンに行き、ネイリストに塗って頂いているの。」と仰いました。よく見てみると、爪の半月部分にはメタルパーツまで付いていました!
「あなたは何処のサロンにいらしているの?」と今度はカツコさんから尋ねられました。私は慌てて、「いえいえ、私は自分で塗っています。」とお答すると
「そう。」と仰いました。そしてもう一度、ご自分の手をご覧になりました。
その後は、ご自身の事を少しづつ話されました。
10年前に亡くなられた立派なご主人のこと。才能あふれるお孫さんの話。そしてご自身はクラシック音楽が大好きなこと等など。ただひたすら・・、私はお聴きしました。
カツコさんはとてもお洒落な方で、ヘアカットには六本木の‘カリスマ美容師’のお店まで、車でいらっしゃるそうです。 「(これからは)ネイリストにはここ(この施設)に来て頂こうかしら。」と仰いました。
その後、お話は美味しいスイーツにうつりました。
「ねえ、銀座に美味しいシュークリーム屋さんがあるでしょ。何というお店だったかしら?」とお尋ねになりました。 (私・・・?)私は知る限りのお店の名を上げましたが・・、どれも違いました。何処かしら?
後日、友人・知人に聞いても分りませんでした。未だに謎・・です。
「今度 銀座に行ったら、皆さんにお土産に買ってきてあげましょう。」と付け加えになりました。
いろいろな方がお出でですね。わたし少々、カルチャーショックを受けました。
( 2019年 7月16日(火)16:00~17:00 )
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