2019年6月25日火曜日

74)ゆしまの郷 家族会 (ボランティアの書道教室) その2

書道ボランティアの方々は手早くテーブルのお片づけを始めました。

一人取り残されたサトシさん(72才 男性)は、まだ書道の先生のお手本に目を向けています。私の 「一緒に書きましょう!」 と言う申し出で我に返ったようでした。

ゆっくりお顔を私に向け 「一緒に?(書いてくれるの?)」 と少しにっこりしました。


それでも・・なかなか筆は進みません。私は 「先ず、書いて見ましょうよ。」 と柔らかく促しました。そしてサトシさんの隣に座り ただ寄り添い しずかに呼吸を合わせていると・・

「ここに、この字を書けばよいのかな?」 とサトシさんは私にお尋ねになりました。

そして親指と人差し指を広げて文字の大きさを測りはじめました。なんども何度も測りました。ただ、筆を半紙の上までは運ぶのですが、やはり駄目でした。書けません。長期戦です・・・。


そのうち 「ここに書くの?」 とまたお尋ねになりました。私はにっこり笑って頷きました。


そのトライアル3度、4度。そして、5度目に・・ついに書きました。書けました!
筆を運び、きちんと 「楽」 という字が半紙に書き下ろされました。
サトシさんは少しだけ胸をはり得意そうになさいました。

書道教室のボランティアの皆さまと家族会の方々が引き上げる際、家族会の*Fさん(女性)から 「もし、お時間があったら喫茶ルームにいらして。」 とのお誘いをうけました。

*Fさんとの出会いは私にとって とても意義のある出会いとなりました。

敬聴を終えて喫茶ルームに着くと、先程のボランティアの先生方と家族会の方々が一緒にお茶を召し上がっていました。私はFさんから皆さまにご紹介して頂き、着席いたしました。


メンバーの方々は今後の活動について意見を出し合っておられました。活気がありました。今回の書道教室はも‘ゆしまの郷’ の家族会が依頼したそうです。


家族会はその他にも 「ゆしまの郷祭り」 等の企画にもお力添えをされているとの事でした。 (なるほど、だから充実していて、入所者を喜ばすことが出来るのですね。納得です!) 施設に任せっぱなしではなく、家族の方々が積極的に参加されているのです。


大事な家族を丸投げするのはダメですよね!

( 2019年 4月27日(土)14:00~16:00 )




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2019年6月15日土曜日

73)ゆしまの郷 家族会(ボランティアの書道教室)その1

敬聴のため6階に到着すると、書道ボランティアの方々が大勢いらっしゃっていました。そして・・お馴染みのお年寄り達にお習字の手解き(てほどき)をしておられました。

私も拝見させて頂くと・・、「お上手でした!」  皆さま とてもお上手でした!

先ず 姿勢が良いのです。素晴らしい! 普段とは違って背筋が伸び‘しゃん’としてました。不思議です。書道の基本が身についておられるのでしょうか。


筆の持ち方も綺麗でした。筆を立ててお書きになっていらっしゃいます。肩に余分な力など入っていませんでした。自然体です。そして利き手でない方の左手で半紙の左下を押さえておられました。(ご立派です!)


先生からそれぞれ「とてもお上手です。」とか「良く書けてますね。」等と 朱墨の文字で書かれ、皆さまとても嬉しそうでした。お顔がほころび、心なしか自信に満ちてお出ででした。人間には「自信」や「誇り」が大切! 必要不可欠なのですね。


一方、元教師のサトシさん(72才 男性)ですが、まだ一筆もお書きになっていません。何だかんだ仰りながら、書けないのです。その一筆が出ないのです。


教師という ご職業柄か、あるいはその律儀なご性格からなのか、字配り(字の配置)ばかり気にされているようでした。逡巡しておられました。傍で見ている私には歯がゆくて、またお可哀そうに映りました。


そうこうする内に、書道教室の終了時間がきたようで、各テーブルではお片づけが始まってました。


サトシさんはポカンとしておられます。ただただ 書道の先生のお書きになったお手本ばかりを眺めておられました。彼にとって「書道教室」はまだ終わっていないのです。
一人だけ 取り残されてしまいました・・・。

私は意を決し、サトシさんと目線が合うようお隣にしゃがみました。やさしく 「一緒に書きましょう!」 と申し出ました。

ゆっくり お顔を私に向けるサトシさん・・・。

( 2019年 4月27日(土)14:00~16:00 )


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