2019年3月15日金曜日

67)歯科医院にて

品の良いおばあちゃま(後でお聞きすると96才とのこと)が娘さんに連れられて歯科医院にいらしてました。

少々お耳が遠いようで、母娘お二人の会話中 何度も 「えっ、何ですって?」 等と聞き返しておられました。「あとで申し上げますね。」 と娘さんは丁寧にお答えになってました。敬語でした。税金か何かの話しのようです。

暫くして、歯科医のS先生がその方のお名前をお呼びになりました。
おばあちゃまは杖を娘さんに預け、看護師さんに手を引いてもらいながら診療室に入られました。

診察室での会話が聞こえてきました。おばあちゃまも先生も大声だったからです。S先生はその方に「また美味しい物をたくさん食べたのでしょう!」と声高に仰いました。
「いいえ、食べてませんわ・・。」 と困惑しているご様子のおばあちゃま。
「そう? でも、歯茎が傷だらけだよ。これじゃ痛いわけだよ!」 と先生。
「そうですかねぇ・・・。」「美味しい物って言っても、お蜜柑とかお肉を少しだけですよ・・。」とおばあちゃま。

その時 歯科助手さんから名前を呼ばれ、私は隣のイスに座りました。

お隣では おばあちゃまに「あまり一所懸命に噛まないでね。」 と先生。
「蜜柑の袋などは噛まずに汁だけ吸うとか・・ねぇ。」とお続けになりました。
「それから施設で出されるお肉などは柔らかいのだから、力を入れて噛まないこと。良いですか。」 とも仰いました。

おばあちゃまは渋々納得されたようです。静かになりました。
歯茎の腫れに薬を塗り、治療を終えた先生は 「もう、痛くないでしょ。」 と優しく仰いました。おばあちゃまは満足そうに頷きました。

私が歯のクリーニングを終えてエレベータに乗ると、先程の娘さん(70才位)がお一人でエレベータに乗り込んでいらっしゃいました。おばあちゃまは未だ治療後のケアがあるようです。

私が「お母さまはご自分の歯で何でも召し上がれて素晴らしいですね!」 と言うと、「そうなんですの。気丈な母で私も負けるくらいですのよ。」 と娘さんはお応えになりました。
「母は常々『人に頼ると頭が悪くなる、頭が働かなくなる。』 と申しているのですよ。」 とも仰いました。なるほど、だからしっかりされているのですね。納得です!

おばあちゃまは この歯科医院のS先生が大好きで、施設がある戸田市からわざわざ通っているのだそうです。その意欲も凄いと思いました。

さらに娘さん (どうやら何かの先生らしいです。待合室の患者さんから ‘先生’ と呼ばれておりました。) は 「母は口の中のことで(私が)注意すると、 『それはどなたが仰ったの? S先生?』 等と言って、私の言葉は信用せず この病院に駆け込むのですよ。」と付け加えになりました。

私が「(お母さまは)しっかりなさってますね。背筋も伸びて 凛とされていて。」と言うと、娘さんは続けました。「私が昔の事や ちょっとした愚痴を言おうものなら 『それはもう過去!』 とピシッと言われてしまうの。」と敬愛の念を込めて仰いました。

とてもとても素敵な母娘さんでした!

       ( 2018年12月27日(木) 12:00~12:30 )


久能山東照宮 神馬