今日はなんだか雰囲気が少し違っておりました。定位置に‘それぞれの方’がおりません。具合でも悪くてお部屋で休まれているのかしら?
見渡すと、気怠そうなキクさん(100才 女性)、トシコさん(95才 女性)、そして、マリコさん(81才 女性)はいらっしゃいました!
でも、マツさん(100才 女性)は見当たりません。カツコさん(80才 女性)もお出でになりません、ヨウジさん(94才 男性)は?
そうこうしていると、エレベーター側 右奥の部屋から、カズさん(105才 女性)が登場されました。お元気そうで車イスを操縦(?)しながら、こちらに向かっております。安心いたしました!
介護士さんに事情をお尋ねすると、連日の猛暑でバテ気味の方や夏風邪をひかれた方が多くお部屋で休まれているとのことでした。
さて、健やか組みの方々と言えば・・。
私は少し億劫そうなキクさん(100才 女性)のテーブルに行き、お話をはじめました。
すると、マツさん(100才 女性)が介護士さんに車イスを押され、同じテーブルに交じりました。さらに、私を見つけたカズさんも加わりました。
圧巻でした。3人の年齢を足すと305才!です。神々しくさえ見えました。
3名のセンテナリアン達とご一緒しているのですね、わたし!
3人のお席に交じり 「何をお聴きしようかな?」 等と考えてワクワクしました。
そして可愛らしいマツさんと目があいました。 「マツさんは美人さんですね!」 と言うと
、マツさんは嬉しそうに目を細め、笑みを浮かべました。
すると、すかさずキクさんが 「美人? 顔の方が少々不細工でも、こころが美人とかね。」 と仰いました。
おーっ! きついお言葉。お年を召しても ‘嫉妬?’ ってあるのですかね。辛辣でした。
そしてカズさんまで 「そうそう、性格美人とかね。‘八方美人’って言うのもあるわね。」 等と。たじたじでした、私!
うん・・? なぜかその時 ひとつ・・気がついた事がありました。
それは・・・、いつの間にか顔見知りの方が ‘一人、また一人、そしてもう一人’ といなくなっている事です。迂闊でした。初めて気がつきました。
ここは ‘高齢者’ 専門の施設。そうです・・、諸行無常です。
合掌
( 実施日:2018年8月19日(日) 14:00~15:00 )
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ブットレアとイチモンジ蝶 |
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ブットレアとキタテハ |
おばあちゃんは何か言いたそうでしたが・・。黙ってご自分は ‘赤いお顔’ をして湯ぶねに浸かっておりました。なかなか我慢強いお方です。
そして極めつけは脱衣場での出来事でした!
脱衣場には、足拭きマットの横に古びたタオルが箱のような物の上に広げてありました。私は湯ぶねから上がり、身体を拭いて脱衣場に移動しました。
その時、はずみでそのタオルを踏んでしまいました。(いけない! やってしまいました。)
すると、先程のおばあちゃんは『あっ!』と言って頭(かぶり)を振りました。(そのタオルは使用後の ※4 ケロリン桶を伏せて、水気を切るための手作り道具でした。)
私は小さくなって『ごめんなさい。』と謝りました。
※4ケロリン桶(ケロリンおけ)とは、日本全国の銭湯や公衆浴場で使用されている黄色いプラスチック製の湯桶のこと。1963年に内外薬品株式会社の鎮痛薬ケロリンの広告媒体として製造が開始された。以降、公衆浴場(銭湯や温泉地、ゴルフ場、ユースホステル、民宿の浴場等)に置かれ、湯桶の定番として広く使われている。印刷がプラスチックの表面ではなく、内部に埋め込まれるキクプリントという技術を採用しているため、文字が消えにくく、また頑丈であるため、別名「永久桶」とも呼ばれる。
その後 おばあちゃんは、暫く番台の方と雑談をしてから帰られました。
因みに、共同浴場の番台にはご近所の方が交替で座り、入浴料等の管理をしております。「澤の湯」の番台のお姉さん(70才位?)は『気にしないでね! ‘高田のばば’には。』と声をかけてくれました。
『高田のばば?』と私。
『あの人はね、‘高田のばば’ と呼ばれている名物ばあさんなのよ。誰にでも言いがかりをつけるのよ。ごめんね!』と慰めてくれました。高田さんという家(うち)のおばあちゃんなので、すなわち ‘高田のばば’ なのだそうです。
さらに番台のお姉さんは『(私は)あなたがちゃんと身体を洗ってから(湯ぶねに)入ったのを見てたわよ。(高田のばばが)もっと何かあなたに言ったら、中(浴室)に入って窘めようと思ってたの。』と仰いました。(いやいや、そんな大袈裟なことではありませんって!)
その ‘高田のばば’ さんは、昔みたTVドラマ「意地悪(いじわる)ばあさん」(長谷川町子の4コマ漫画が原作)の主人公で、髪型が ‘お団子ヘア’ をそのまま真似ておりました。そう、頭のてっぺんに ‘おだんご’ を結い上げておりました!
すると、脱衣場の長いすに腰掛けていた おばあちゃん(80代位でしょうか)も『そうそう、私も文句を言われた事があるのよ。でもね、自分は浴室に人がいないと、石鹸やら何やら 一切合切(いっさいがっさい)自分の道具を並べて、独り占めにしているのよ。自分のことって分らないのよねぇ。』等と言って加勢してくれました。(いえいえ、私は大丈夫です。何とも思っておりません!)
その土地に生まれ育った地元の人は、余所から来た ‘よそ者’ や観光客のような ‘一見さん’ を拒むのでしょう。大切な場所を荒らされたくないのだと思います。
ちなみに我が妹は『これだから地方は寂れる(さびれる)のよ。排他的なのよね。』などと申しておりました。
しかし、それより何より私が感心したのは、番台のお姉さんが 先程 私を叱った(文句を言った)おばあさんに何か冗談を言い『今日は笑ったから、一日良いことがあるわよ!』等と励ましていたことです。感動しました!素晴らしいです。お年寄りたちのカウンセラーでした。
また ‘腰がくの字に曲がった’ かなりご高齢な方の御着替えも手伝っておりました。決して珍しいことではなく日常茶飯事なのでしょう。とても自然でした。
手際が良く、まるでベテラン介護士さんのようでした。
地方のコミュニティーではこのようなことが自然に出来ているのですね。
声高に唱えるのではなく‘自然に’です。自然に敬聴がなされておりました。
共同浴場で ‘敬聴の極意’ を目の当たりにさせて頂きました。また一つ勉強になりました。
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鎌倉 長寿寺 |