2018年7月25日水曜日

52)『適当に~ね!』(水中ウオーキング編)              (2018年6月8日 金 )

知人に水泳の基礎を教えて貰うため、TOというスポーツジムに行きました。
待ち合わせは午後2時、ジムのロビーです。私はこの日のために午後から休暇をとりました。

最近、運動不足がたたり膝痛のため、医師から水中運動を勧められておりました。幸いなことに、このジムには ‘水中ウオーキングのクラス’ もあるという事でしたので、先にこのレッスンに参加させて頂くことにしました。

知人に教わりながら準備体操をしていると、同じウオーキングのクラスに参加されるという、御年93才のチャーミングな女性 ヨシコさんを紹介されました。にこやかでウイットに富み、とても素敵な方でした!

一通りの準備体操を終え、レッスンの開始時間まで ジャグジーに入って身体を温めていると、後からヨシコさんも入っていらっしゃいました。

93才とは思えない程 お元気で若々しく 何より可愛らしい方でした。
また、お話がユーモラスで味があります。打てば響くような受け答えをされておりました。一緒にウオーキングのレッスンを受けられるのが嬉しくなりました。

さて、ウオーキングのレッスン時間になりました。
ウオーキング用のレーンに着くと、既に40人程のシニアの男女が集まっておりました。平均年齢は70才を超えているように見えました。そして皆さま、思い思いのカラフルな水着を身につけておりました。シニア世代恐るべし!

ただ、レッスンは思ったよりハードで、水中エアロビクスのようでした。
私はコーチに言われた通りに
、必死になって手(腕)を上げたり、足を(蹴り)上げたりしました。さらに腰をおとし大股で歩いたり、カニのように横歩きもしました。水中ジャンプやうしろ歩きだってしました。もう私、ヘトヘトです。

汗だくで格闘(?)していると、いつの間にか横にいらしたヨシコさんが『適当にね!』と私に向かってウインクをなさいました。しかも涼やかなお顔で。

その後も私がレーンを一周する毎に、( ヨシコさんは ‘適当にスタンス’ で優雅に半周まわりをされておりましたが )『て・き・と・う・に!』とにこやかにお声をかけて下さいました。

皆さん、嬉しそうで楽しそうで、ニコニコとしておりました。
マイペースで「今の自分に出来る事だけを楽しく行う!」と言うことなのでしょうか。シルバー世代の ‘ゆとり’ ですね。心身ともに余裕があります。

ヨシコさんは「ジムの達人!」でした。いろいろな所に ‘達人’ っていらっしゃるのですね。



photo: (c) Hiro K
http://ganref.jp/m/md319759/portfolios

2018年7月15日日曜日

51) 律儀なガッコの先生 その2

立ち上がったサトシさん(70才 男性)に、テーブル席の皆さんは誰も驚きませんでした。関心がないようでした。でも・・、私は戸惑いました。
キクさん(99才 女性)とトシコさん(94才 女性)も互いに顔を見合わせているだけでした。

我々の思いを尻目に、サトシさんは出口を探しているようでした。
『玄関は何処かな?』 と私に尋ねました。どうお答えしたら良いのか困りました。

『どこまでいらっしゃるのですか?』とお訊きするのが精一杯でした。 

すると、『霞ヶ関か、虎の門まで。地下鉄で行こうかな?』 等と言って、一人で歩きだし、エレベーターの方に向かいました。(文科省を思い浮かべているのでしょうか。)

そして・・、フロアーを一周して戻ってきました。 『エレベーターがね、動かないんだよ。』  とぶつぶつ言いながら。
そのサトシさんに介護士さんは 『 (エレベーターは) 今、点検中ですよ。』 と答えておりました。 (本当は入所者が一人で出て行けないように、カードキーが必要でした。)


それから介護士さんは 『此処で、エレベーターの回復を、みんなで待っているんだよ。』 と ‘まことしやか’ に言いました。

でも、会議の時間 (?) が迫っているサトシさんは、気もそぞろで落ち着かないご様子です。何度もエレベーター前まで足を運び、首を傾げて戻ってきました。

そこに、御歳(おんとし)105才のカズさん(女性)のご登場です。
『一緒に行きましょうか。』 とお声をかけました。
 “ジェントルマン” のサトシさんは、車イスにご乗車のカズさんの(片)手を取り、一緒にまたエレベーターの方に向かいました。

まるで映画のワンシーンのようでした。

暫くしてから、今度は何事もなかったように二人で戻ってきました。
そしてカズさんは私に目を留め、サトシさんに 『この方(私のこと)は安倍総理の御妹さんだから、握手して貰いなさい!普通は握手なんかして頂けないのよ。』 と仰いました。(えっ!だれが・・? 困惑の私!)

サトシさんは私をチラッと見ると、右手を差し出しました。私に目くばせして頷きながら・・。
この状況 (カズさんの思い違い) が分っているようでした。
私は何がなんだか分らなくなりました。どなたが正気でノーマルか。


でも、お二人の ‘やり取り’ は優しく温かくて思わず笑みがこぼれました。 ‘上質なコント’ を観ているようでした。
 
ただ、切ないくらいに悲しいトラジコメディでした。

( 実施日:2018年5月4日(金) 14:00~15:00 )
 
覚園寺



覚園寺