落語家つながりで、もう一人忘れられない落語家さんのお話です。
かなり前に私は七代目古今亭志ん馬さんの落語を聴いたことがあります。場所は東大赤門前にある*食堂 もり川です。
*食呑味処のもり川は “東大生と共に明治から” というキャチコピーで知られた 創業125年の老舗食堂です。
志ん馬さんの師匠は、六代目古今亭志ん馬さんと三代目古今亭志ん朝さんです。彼は1996年にNHKの新人演芸大賞落語部門大賞を受賞された実力のある落語家さんでした。私はもり川で初めて志ん馬さんの落語をききました。
その落語会は大の落語好きである ‘もり川の店主’ が趣味で催したものでした。席も限られ、お店がはねた夕方から地下のお座敷で馴染みのお客さん25~30名くらいしか入れませんでした。私は友人のコバヤシくんとイシイちゃん(このブログの114)をご参照)を誘いました。それぞれ法医学者、病理学者という堅物です。
その時にいらしたのが志ん馬さんと三代目古今亭志ん朝さんのお弟子さんだった落語家さんでした。(名前は失念しました。)
なにせ店主の ‘趣味の会’ でしたので、木戸銭は格安で、しかも飲み放題!大食いで吞兵衛のイシイちゃんからはとても喜ばれました。彼は余興のビンゴゲームでは焼酎一本をゲットする有様です。落語を聴いたのは「人生で初めて」と言っていた彼がです。
落語がおわると、二人の落語家さんは其々に三卓の和座敷テーブルを周って一緒に飲んだり歓談をしました。志ん馬さんは三つのテーブルを一通り周ると、もう一度 私たちの席にいらっしゃいました。
既にかなりお飲みになっていましたが、私たちの質問に答えてくれたり、笑い話などをおきかせ下さった後、泣き上戸らしく もう一方の落語家さんを「あいつは顔が丸くて ふくよかだから、落語として得なんだよなぁ・・。」「おれは痩せていて、(顔の印象が)暗く見えるから・・。」等と、酔うほどに ちょっと涙を流しながら仰いました。
私は性分で生意気にも彼を励ましはじめました。「ひとはひと。比べちゃあ、だめよ!志ん馬さんの良いところをのばしましょ!」なんて言ってしまいました。
すると、志ん馬さんは私の顔をみて「ありがとう。姐さん!」と仰いました。粋なご商売の方に「あねさん!」などと言われたのは初めてでした・・。
下段一番目の写真がその時 特別に下さった手ぬぐいです。志ん馬さんはその数年後 若くして亡くなられました。 合掌
狂歌仲間の古今亭ぎん志師匠 |
大先輩の夢月亭清磨師匠 |