2023年5月25日木曜日

168) 【徒然に】ちょっといい話 老舗の学生食堂で落語会

落語家つながりで、もう一人忘れられない落語家さんのお話です。
かなり前に私は七代目古今亭志ん馬さんの落語を聴いたことがあります。場所は東大赤門前にある*食堂 もり川です。

*食呑味処のもり川は “東大生と共に明治から” というキャチコピーで知られた 創業125年の老舗食堂です。

志ん馬さんの師匠は、六代目古今亭志ん馬さんと三代目古今亭志ん朝さんです。彼は1996年にNHKの新人演芸大賞落語部門大賞を受賞された実力のある落語家さんでした。私はもり川で初めて
志ん馬さんの落語をききました。

その落語会は
大の落語好きである ‘もり川の店主’ が趣味で催したものでした。席も限られ、お店がはねた夕方から地下のお座敷で馴染みのお客さん25~30名くらいしか入れませんでした。私は友人のコバヤシくんとイシイちゃん(このブログの114)をご参照)を誘いました。それぞれ法医学者、病理学者という堅物です。

その時にいらしたのが志ん馬さんと三代目古今亭志ん朝さんのお弟子さんだった落語家さんでした。(名前は失念しました。)

なにせ店主の ‘趣味の会’ でしたので、木戸銭は格安で、しかも飲み放題!大食いで吞兵衛のイシイちゃんからはとても喜ばれました。彼は余興のビンゴゲームでは焼酎一本をゲットする有様です。落語を聴いたのは「人生で初めて」と言っていた彼がです。

落語がおわると、二人の落語家さんは其々に三卓の和座敷テーブルを周って一緒に飲んだり歓談をしました。志ん馬さんは三つのテーブルを一通り周ると、もう一度 私たちの席にいらっしゃいました。

既にかなりお飲みになっていましたが、私たちの質問に答えてくれたり、笑い話などをおきかせ下さった後、泣き上戸らしく もう一方の落語家さんを「あいつは顔が丸くて ふくよかだから、落語として得なんだよなぁ・・。」「おれは痩せていて、(顔の印象が)暗く見えるから・・。」等と、酔うほどに ちょっと涙を流しながら仰いました。

私は性分で生意気にも彼を励ましはじめました。「ひとはひと。比べちゃあ、だめよ!志ん馬さんの良いところをのばしましょ!」なんて言ってしまいました。

すると、志ん馬さんは私の顔をみて「ありがとう。姐さん!」と仰いました。粋なご商売の方に「あねさん!」などと言われたのは初めてでした・・。

下段一番目の写真がその時 特別に下さった手ぬぐいです。志ん馬さんはその数年後 若くして亡くなられました。 合掌
                               


狂歌仲間の古今亭ぎん志師匠

大先輩の夢月亭清磨師匠

2023年5月15日月曜日

167) 【徒然に】人間国宝、鶴澤津賀寿さんの記念演奏会と祝賀会で

連休最終日に紀尾井小ホールで催された「5月公演 鶴澤津賀寿・人間国宝認定(令和4年度)記念 女義太夫演奏会」と鶴澤津賀寿さんの祝賀会に行って参りました。素晴らしいものでした!

記念演奏会の演目は『寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)』と『寿詞繭依絲(ことほぎてまゆのよりいと)』(企画:鶴澤津賀寿、構成:村尚也)そして『壺坂観音霊験記(つぼさかかんのんれいげんき)山の段』です。

人間国宝の竹本駒之助師匠とその弟子で新たに人間国宝になられた鶴澤津賀寿さんの豪華な共演です。また東京の女流義太夫の皆さま総出演の演奏会でした。お祝いの演奏会に相応しい おめでたく楽しいステージでした。

どの曲も素晴らしかったのですが、津賀寿さん企画の『寿詞繭依絲』のうち「近頃河原逹引 堀川猿廻しの段」(浄瑠璃: 竹本越若、三味線: 鶴澤津賀寿、ツレ: 鶴澤賀寿)には心を揺さぶられました。圧巻でした!

その後、ホテルニューオータニの鳳凰の間で『鶴澤津賀寿さん 人間国宝認定を祝う会』がありました。竹本駒之助師匠、鶴澤津賀寿さん、京舞の井上八千代さんや新内の鶴賀若狭掾さん、歌舞伎音楽 竹本の太夫 竹本葵太夫さん等、5名の人間国宝が勢揃いしました。

ステージの傍らで椅子に腰かけながら、お弟子さんである津賀寿さんを優しく見守っていらした 齢88の竹本駒之助師匠が、司会者にマイクを向けられ『つがじゅさん、おめでとう!』とお言葉を述べられた時には、会場は拍手喝采でした。私まで涙が出そうになりました。

他にも、劇団四季の坂本剛さんの演奏や花束贈呈等のサプライズが盛りだくさんで、会場のボルテージが上がりました。

余談ですが、祝賀会には先日文京区の「避難訓練寄席」(このブログ 161) をご参照ください)にご出演頂いた古今亭菊之丞さんもお出ででした。その時の話をすると、菊之丞さん曰く『はい。ネタにさせて頂いております!』とのこと。さすが落語家さんです。

そして『あれで災害の時 役に立つんですかね。』と仰いましたので、私は『はい。区民はとても喜んでいましたので、充分 役に立つと思いますよ。災害時には慌てず、落語会の時のように「これは訓練だ」と思って、落ち着いた行動ができそうな気がします。』と(区長に成り代わって?)お答えしておきました!



    


井上八千代さん


竹本駒之助師匠
おまけ(古今亭菊之丞さんと)