2023年3月25日土曜日

164) 【徒然に】ちょっといい話 大江健三郎さん編 その1

本年 3月3日に現代日本を代表する大文豪の大江健三郎さん (敢えて 先生とお呼びせず、“大江さん”と呼ばせて頂きます) が亡くなられました。私の大好きな小説家の一人です。謹んで哀悼の意を表します。

大江さんは戦後の日本文学の旗手として数々の文学賞を受賞し、日本人として二人目のノーベル文学賞(1994年)も受賞されました。また核兵器や平和問題、そして憲法改正に反対する会や脱原発を訴えるデモの呼びかけ人など、社会問題に対しても発言を続けてこられました。

大江さんの訃報ニュースが流れた際、恐れ多いことに 私は友達の数人からお悔やみの言葉を頂戴いたしました。身に余り とても恐縮しました。

その訳は・・大江さんと私の間でこんなエピソードがあったからです。

1993年1月23日に大江さんのご講演を聴きにパルテノン多摩(多摩センター駅)に行った時のことです。なぜ正確な日付を覚えているかと言うと、その日は安部公房さんが亡くなった (没1993年1月22日) 翌日だったからです。

当日、私は気合を入れ かなり早く家を出ました。講演会場に早めに着き、前方の席でご講演を聴くためです。ただ・・、京王線の乗るべき電車を間違えました。「橋本行き」ではなく「八王子(高尾)方面行き」の電車に乗ってしまったのです。

元来、私は方向音痴な上に おっちょこちょいです。いつまで乗っても多摩センター駅に着きません。焦りました。そのうち、やっと間違いに気づき 調布駅まで戻りました。そして「橋本行き」に乗り換えました。1月です。雪もちらつき始め、涙がでました。

開場時間を大幅に過ぎ、やっと多摩センター駅に着きました・・。
今度こそ、会場である「パルテノン多摩」に間違いなく到着できるよう、細心の注意をはらいました。念のため、改札口を出たところにあった「案内地図看板」を念入りにチェックしました。

そして会場に向かおうとした時、その「案内地図看板」の反対側にどこかでお見かけしたことのある方と目が合いました。穏やかに微笑みながら私を見ています。「あれっ? どなたかしら・・。私の知り合い?」  (その2に続く)


湯島天神






2023年3月15日水曜日

163) 【徒然に】上杉 謙信って・・

M教授の退官記念講演は「夢と志」というタイトル。先生が心酔している武将の一人、上杉謙信の言葉 ‘天地人’ に絡めてのお話でした。天が与えてくれた「恩師との出会い」そして地の利(良い環境)での「研究課題」それから何より大切な「研究班のメンバーたち(人)との和」を述べておられました。医師としての生涯の研究テーマやその素晴らしい業績などを織り込んだ講演でした。

あらためて調べてみました。「天地人」とは上杉謙信の言葉からとられていますが、これは、孟子の教え「天の時 地の利人の和」を上杉謙信が引用したと考えられています。 戦に勝つには、即ち 物事を成功させるにはこの3つの条件が必要だということです。 

上杉謙信は戦が強かったことから「軍神」とか「越後の龍」などと呼ばれていましたが、その一方、自分の欲よりも義を重んじた武将としても知られています。上杉謙信は、助けを求める人には手を差し伸べるなど義に厚い面があったそうです。

これは幼少時から寺に入門して仏道を学び、信仰心や義の心を育んだことも影響していたようです。因みに、自らを「毘沙門天」の生まれ変わりと称していました。

『運は天にあり、鎧は胸にあり、手柄は足にあり』という名言は、上杉謙信の居城である春日山城の壁に書かれた「春日城壁書」の一節です。言葉の意味は「運に任せないで、自分自身で道を切り拓け」という武士としての心得を示すものだそうです。

また「敵の弱みにつけこまず、逆に苦境から救う」という意味の「敵に塩を送る」という言葉は上杉謙信が塩不足で苦しんでいた敵将の武田信玄に“塩を送った”行動から生まれたことわざ(古事)とされています。史実は分かりません。

余談ですが、上杉謙信は「実は女性だった」という俗説(歴史小説家、八切止夫氏など)もあるようですが、真意はともかく「敵に塩を送る」等という心遣いも憶測を生む要因の一つでしょうか。

私は以前、古文書を学んでいたことがありますが、謙信の書状の筆跡はとても繊細で美しく線も細かった記憶があります。女性的と言えば女性的。墨も黒々としてはおらず、薄かったように覚えております。もちろん達筆でした。

読書の好みも源氏物語や伊勢物語などの恋愛ものだった(『戦国大名と読書』小和田哲男著)とか生涯独身を貫いたことなど等も、上杉謙信女性説の根拠となったようです。但し 王朝文学である『源氏物語』は戦国武将の基礎教養の一つだったとも書いてありました。

最近評判の男女逆転劇、NHK総合 ドラマ10の『大奥』(原作:よしなが ふみ)と相まって、私の妄想が膨らみました。


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