2021年6月25日金曜日

122) 【徒然に】心にのこる旅:「キエフ・モスクワと北欧」編 その6 ファンレター?

『あら? もう直ぐ夕食なのに何処へいらっしゃるの?』の問いに、

嘘をつくのも躊躇われ、あたりを見回し小声で ムンク美術館に向かう旨を伝えました。すると、やはり・・羨ましがられました。『私達もご一緒したいけど、あなたに迷惑をかけてしまうわね。』

そしてご夫妻は顔を見合わせ『もし可能なら・・、図録を何語でも構わないので買ってきて貰えないかしら。』と懇願されました。私・・引き受けました!

ムンク美術館へは 雨と夕方の帰宅ラッシュのせいで、タクシーで30分程かかりました。美術館には小学校1年生くらいの子供たちが10人位来ていました。お揃いの黄色い雨傘が館内に広げ干してありました。

ムンクの代表作『叫び』や『思春期』『マドンナ』等の暗いイメージで訪れた私は、館内の明るさと穏やかなふんわりとした雰囲気に少し戸惑いました。

そんな中、美術館で新たに出会った作品が『疾駆する馬』です。衝撃を受けました。絵の前で私は動けなくなりました!初めての経験です。真っ白な雪を蹴散らして 目を剥き狂ったように こちらに迫ってくる茶色の馬。飛びのく人。迫力満点で、まるで馬が絵の中から飛び出してきそうでした!

一方 会議室には、対照的に明るい色合いの『太陽』(複製画)が壁一面に飾られていました。後光がさしているように見えました。深遠な画家でした。ムンクは凄いとあらためて感動しました!私はムンクが大好きになりました。

エルミタージュ美術館で不完全燃焼に終わった無念を、私はここムンク美術館で晴らしました!思う存分に鑑賞できました。
そして盛り沢山だった旅も終わり、翌日には帰国の途に就きました・・・。

飛行機の中では、ムンクの図録を依頼した(今度は)奥さまの方から、当時 私がしていた ‘編み込み’ の仕方を教えて欲しいと頼まれました。お孫さんの髪を編んであげたいのだそうです。

お教えしていると、私の周辺に旅の仲間 数人が集まりました。皆さま、熱心に私の手先を見ていらっしゃいます。ツアー最終日 私は「にわか添乗員」から「かりそめ美容師」に変わりました!

帰国の翌日から
私は(都内ですが)三泊四日の出張に出ました。気も張っており、若かったので務めは全うできましたが、さすがに 無事仕事を終え自宅に向かう途中からは、疲れがピークに達しました。ヘトヘトでした。

帰宅すると、玄関で母が笑いながら「たくさん ファンレターが届いているわよ!」と云いました。

「ファンレター?」さっそく 自分の部屋に入ると、なんと 机の上には山積みの手紙(数えたら 20通程ありました!)とハガキが5~6枚、そして菓子折りが3箱 置いてありました!




錦糸公園




2021年6月15日火曜日

121) 【徒然に】心にのこる旅:「キエフ・モスクワと北欧」編 その5 ムンク美術館

北海道のTご夫妻とは 帰国後も連絡を取り合うほど 仲良くなりました。そしてお二人は夕食のみならず 朝食や昼食の時にも 私の席を取っておいて下さるようになりました。

そのうち 他のメンバーに対し私のことを「うちの娘!」と冗談交じりに吹聴しはじめました。メンバーの何人かは真に受け、また 訝しく思われた方々は私にその真偽を確かめにくるようになりました。

そんな中でのオスロ観光です。見学はノルウェー王宮やオスロ市庁舎、そしてヴィーゲラン彫刻公園などでした。足元の悪い階段で、私はかなりご高齢の女性の手をとり(手を繋いで)歩いたところ、他の方々にやきもちを妬かれました。依怙贔屓した訳ではありませんが、まずかったのでしょうか・・。

今回のオスロ観光には私の二つ目の目的である ※ムンク美術館は
入っていませんでした。しかし何としても行きたい場所の一つでした。私はひそかに添乗員さんにどこか途中(ムンク美術館に近いトイレ休憩所など)で降ろして貰えないかと頼んでおりました。

※ムンク美術館:画家エドヴァルド・ムンクの作品や生涯についての資料を展示している、ノルウェーのオスロにある美術館

でも 彼から『あなたがいなくなると皆さんが心配するし、一緒にムンク美術館へ行きたい等と言い兼ねません。一旦 ホテルに着いてから ‘こっそり’ 出かけて頂けると助かります。』とやんわり断られました。

さらに『ホテル到着後すぐに夕食となりますので、あなたの夕食は無しとなりますがよろしいでしょうか。英語は通じますから ホテルからタクシーを呼んで、そっとお一人でいらして下さい。』と言われてしまいました・・。

宿泊ホテルは館内ムンク一色でした。いたるところにムンクの複製画が飾ってあります。国の誉れ。市民から大切にされている画家なのですね。私は急いで
部屋に荷物を置き、すぐにロビーに向かいました。

すると・・、ツアーメンバーのK赤十字病院の院長ご夫妻から声を掛けられました。『あら? もう直ぐ夕食なのに何処へいらっしゃるの?』