奥のテーブルに目を遣ると、節分用の大きな鬼のお面がありました。そして頭の一部に丸めた茶色の薄紙が貼ってありました。なるほど、貼り絵ですね!
インドネシア人の介護士 エドさんも、左手のひらに薄紙をのせ、もう片方の手と合わせ、器用にも薄紙を ‘くるくる’ と丸めてました。
私もそれを真似て、両手のひらに薄紙をはさみ ‘くるくる’ と回して紙のボールを作ると、お年寄り達から感嘆の声が上がりました。
私が「こうすると、簡単に可愛い薔薇のようなボールができますよ!」と言うと 皆さま一斉に薄紙を手にし 真似して作り始めました。 が・・、丸いボールは上手に出来ませんでした。
トシコさん(95才 女性)は「あなたと違って歳をとっているのだから、手も足も乾燥して丸まらないわよ。」と訴えました。(あっ、そうか・・。ごめんなさい! 不覚でした、私。)
「でも、トシコさんのお顔はつるつるですよ!」と私が言うと、
「あなたとは全然違うわよ、キレイね、あなた。肌が違うわね、やっぱり若いから。」とトシコさんに褒められ(?)ました。(若くはないのですけれど・・私。)
それから私は トシコさんに ‘ご自慢の息子さん’ へと話を向けました。(このブログの66)参照。)「息子さんは文京区にお住まいでしたよね、慶應ボーイの!」と言うと、「そうよ、私には4人もいるのよ、息子が。」とトシコさんはお答えになりました。
話によると、トシコさんのお子さんは男性ばかりの4人で、そのうちお二人は双子だそうです。また、そのお名前が・・おめでたい名前ばかりでした!
『竹蔵』『松男』『末廣』(敬称略)、そして もう一人のお名前は・・忘れたそうです。
「男の子の子育ては大変よ。一人でたくさんよ! もう一人で充分! たいへんだもの。」「食事の支度だってね、食べ盛りの男の子ばっかりでしょ。たいへん!もう一人で充分だわよ!」と何度も力説なさいました。
そのうち 介護士さんが3時のおやつにヨーグルトとミルクたっぷりのコーヒー を配りはじめました。皆さま おとなしくそれをお飲みになりました。
其々が飲み終えると、キクさん(100才 女性)はお片付けをし始めました。
他の方々が飲み終えたカップをまとめたり、空になったヨーグルトカップを重ねたり。いつだってきちんとお片付けするのはキクさんです!
そこに 介護士のエドさんに車椅子を押されてハルさん(85才 女性)がやって来ました。ハルさんは私を見つけると、目を輝かせて「ワタシの大好きな ‘おねえさん’ がいる。会いに来て くれたの、嬉しい! 」と仰いました。(そんな風に言って頂き恐縮でございます!)
「ありがとうございます。でも、私はもう ‘おねえさん’ と言って頂ける年ではありませんよ。」とお応えしました。「ハルさんもお元気そうで何よりですね!」と続けると「そんなことないよ。もう早くお迎えにきて欲しいの。皆に迷惑をかけちゃうから。」と言いながら自嘲気味に笑いました。
そして いきなり「この ‘頭のぼけた’ 婆さん、早く死んでしまえ!」と言いながら、ご自分の頭を叩きました。(ビックリしました! ・・とても悲しくなりました。私、切ないです。やるせないです。)
歳をとって物忘れがひどくなり、物事が(多少)分らなくなるのが、そんなに悪いことなのでしょうか、歳をとることは罪なのでしょうか。一番つらく悲しいのは ‘そのことに気がつき、でも どうにもならない’ ご本人です。
歳をとれば誰でも、多かれ少なかれ物忘れが多くなり、身体も「不‘自由’・不便」になります。周りに迷惑をかけている自分を卑下し、苦しませる社会の方が罪です!(と私は思います。)
「今、生きていること」「生きてきたこと」に誇りを持ってください。
ハルさん、あなたは何も悪くありませんよ!
( 2019年1月14日(月) 成人の日 14:00~15:00 )
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