2019年3月25日月曜日

68)「ワタシの大好きなおねえさん(?)」

皆さま、何やら熱心に色とりどりの ‘10センチ四方’ の薄紙を折ったり、手で握ってくしゃくしゃにしてました。(何かしら?)

奥のテーブルに目を遣ると、節分用の大きな鬼のお面がありました。そして頭の一部に丸めた茶色の薄紙が貼ってありました。なるほど、貼り絵ですね!

インドネシア人の介護士 エドさんも、左手のひらに薄紙をのせ、もう片方の手と合わせ、器用にも薄紙を ‘くるくる’ と丸めてました。

私もそれを真似て、両手のひらに薄紙をはさみ ‘くるくる’ と回して紙のボールを作ると、お年寄り達から感嘆の声が上がりました。


私が「こうすると、簡単に可愛い薔薇のようなボールができますよ!」と言うと 皆さま一斉に薄紙を手にし 真似して作り始めました。 が・・、丸いボールは上手に出来ませんでした。


トシコさん(95才 女性)は「あなたと違って歳をとっているのだから、手も足も乾燥して丸まらないわよ。」と訴えました。(あっ、そうか・・。ごめんなさい! 不覚でした、私。)


「でも、トシコさんのお顔はつるつるですよ!」と私が言うと、
「あなたとは全然違うわよ、キレイね、あなた。肌が違うわね、やっぱり若いから。」とトシコさんに褒められ(?)ました。(若くはないのですけれど・・私。)

それから私は トシコさんに ‘ご自慢の息子さん’ へと話を向けました。(このブログの66)参照。)「息子さんは文京区にお住まいでしたよね、慶應ボーイの!」と言うと、「そうよ、私には4人もいるのよ、息子が。」とトシコさんはお答えになりました。

話によると、トシコさんのお子さんは男性ばかりの4人で、そのうちお二人は双子だそうです。また、そのお名前が・・おめでたい名前ばかりでした!
『竹蔵』『松男』『末廣』(敬称略)、そして もう一人のお名前は・・忘れたそうです。
 

「男の子の子育ては大変よ。一人でたくさんよ! もう一人で充分! たいへんだもの。」「食事の支度だってね、食べ盛りの男の子ばっかりでしょ。たいへん!もう一人で充分だわよ!」と何度も力説なさいました。

そのうち 介護士さんが3時のおやつにヨーグルトとミルクたっぷりのコーヒー を配りはじめました。皆さま おとなしくそれをお飲みになりました。
其々が飲み終えると、キクさん(100才 女性)はお片付けをし始めました。
 

他の方々が飲み終えたカップをまとめたり、空になったヨーグルトカップを重ねたり。いつだってきちんとお片付けするのはキクさんです!

そこに 介護士のエドさんに車椅子を押されてハルさん(85才 女性)がやって来ました。ハルさんは私を見つけると、目を輝かせて「ワタシの大好きな ‘おねえさん’ がいる。会いに来て くれたの、嬉しい! 」と仰いました。(そんな風に言って頂き恐縮でございます!)


「ありがとうございます。でも、私はもう ‘おねえさん’ と言って頂ける年ではありませんよ。」とお応えしました。「ハルさんもお元気そうで何よりですね!」と続けると「そんなことないよ。もう早くお迎えにきて欲しいの。皆に迷惑をかけちゃうから。」と言いながら自嘲気味に笑いました。


そして いきなり「この ‘頭のぼけた’ 婆さん、早く死んでしまえ!」と言いながら、ご自分の頭を叩きました。(ビックリしました! ・・とても悲しくなりました。私、切ないです。やるせないです。)


歳をとって物忘れがひどくなり、物事が(多少)分らなくなるのが、そんなに悪いことなのでしょうか、歳をとることは罪なのでしょうか。一番つらく悲しいのは ‘そのことに気がつき、でも どうにもならない’ ご本人です。


歳をとれば
誰でも、多かれ少なかれ物忘れが多くなり、身体も「不‘自由’・不便」になります。周りに迷惑をかけている自分を卑下し、苦しませる社会の方が罪です!(と私は思います。)
「今、生きていること」「生きてきたこと」に誇りを持ってください。

ハルさん、あなたは何も悪くありませんよ!

( 2019年1月14日(月) 成人の日 14:00~15:00 )



銀山温泉


白銀の滝

2019年3月15日金曜日

67)歯科医院にて

品の良いおばあちゃま(後でお聞きすると96才とのこと)が娘さんに連れられて歯科医院にいらしてました。

少々お耳が遠いようで、母娘お二人の会話中 何度も 「えっ、何ですって?」 等と聞き返しておられました。「あとで申し上げますね。」 と娘さんは丁寧にお答えになってました。敬語でした。税金か何かの話しのようです。

暫くして、歯科医のS先生がその方のお名前をお呼びになりました。
おばあちゃまは杖を娘さんに預け、看護師さんに手を引いてもらいながら診療室に入られました。

診察室での会話が聞こえてきました。おばあちゃまも先生も大声だったからです。S先生はその方に「また美味しい物をたくさん食べたのでしょう!」と声高に仰いました。
「いいえ、食べてませんわ・・。」 と困惑しているご様子のおばあちゃま。
「そう? でも、歯茎が傷だらけだよ。これじゃ痛いわけだよ!」 と先生。
「そうですかねぇ・・・。」「美味しい物って言っても、お蜜柑とかお肉を少しだけですよ・・。」とおばあちゃま。

その時 歯科助手さんから名前を呼ばれ、私は隣のイスに座りました。

お隣では おばあちゃまに「あまり一所懸命に噛まないでね。」 と先生。
「蜜柑の袋などは噛まずに汁だけ吸うとか・・ねぇ。」とお続けになりました。
「それから施設で出されるお肉などは柔らかいのだから、力を入れて噛まないこと。良いですか。」 とも仰いました。

おばあちゃまは渋々納得されたようです。静かになりました。
歯茎の腫れに薬を塗り、治療を終えた先生は 「もう、痛くないでしょ。」 と優しく仰いました。おばあちゃまは満足そうに頷きました。

私が歯のクリーニングを終えてエレベータに乗ると、先程の娘さん(70才位)がお一人でエレベータに乗り込んでいらっしゃいました。おばあちゃまは未だ治療後のケアがあるようです。

私が「お母さまはご自分の歯で何でも召し上がれて素晴らしいですね!」 と言うと、「そうなんですの。気丈な母で私も負けるくらいですのよ。」 と娘さんはお応えになりました。
「母は常々『人に頼ると頭が悪くなる、頭が働かなくなる。』 と申しているのですよ。」 とも仰いました。なるほど、だからしっかりされているのですね。納得です!

おばあちゃまは この歯科医院のS先生が大好きで、施設がある戸田市からわざわざ通っているのだそうです。その意欲も凄いと思いました。

さらに娘さん (どうやら何かの先生らしいです。待合室の患者さんから ‘先生’ と呼ばれておりました。) は 「母は口の中のことで(私が)注意すると、 『それはどなたが仰ったの? S先生?』 等と言って、私の言葉は信用せず この病院に駆け込むのですよ。」と付け加えになりました。

私が「(お母さまは)しっかりなさってますね。背筋も伸びて 凛とされていて。」と言うと、娘さんは続けました。「私が昔の事や ちょっとした愚痴を言おうものなら 『それはもう過去!』 とピシッと言われてしまうの。」と敬愛の念を込めて仰いました。

とてもとても素敵な母娘さんでした!

       ( 2018年12月27日(木) 12:00~12:30 )


久能山東照宮 神馬