私がカズさん(105才 女性)のお話を伺っている時、カズさんは目ざとくエレベータを降りたN子先生を見つけました。そして嬉しそうに「N子先生!」と呼びかけました。するとN子先生はこちらに顔をむけ「あとで寄るわね!」とにこやかに答えました。
さて、カズさんのお話ですが、お父さまは警察官で 外では厳めしかったものの 家ではとても子煩悩な方だったそうです。
5歳の頃のカズさん(何と今から100年前です!)は「おとうちゃま」と呼び、勤務を終え帰宅されたお父さまを、お兄さまと二人で玄関の上がり框に座り、手をついて「お帰りなさい!」等とお迎えをしていたと懐かしそうに仰いました。(白いフリルエプロンを着けた、おしゃまな5歳のカズさんの姿が私の脳裏に浮かびました。)
そして二人は疲れていたお父さまの背中にのり「馬乗り等をして遊んでもらった」と当時を思い出しておりました。童心に返ったようで目をキラキラとさせておりました。
お父さまは 時々 サンドイッチをお土産に持ち帰ってきたとカズさんは仰いました。100年前にサンドイッチなどあったのでしょうか。
(地方出身の)他のお年寄りたちは「(その頃) サンドイッチなど食べた事はなかった」と口々に仰っておりました。
また、そんなお父さまも偶に(たまに)同僚等との意見の不一致で、いざこざもあったようですが、仏頂面で帰宅されても、カズさん達 子供の無邪気な顔をみると怒りも収まり機嫌がなおったとのことです。
そして そんな時にはお母さまが「人はそれぞれ、いろいろな考え方がありますよ。」等と慰め(宥め)ていたとも仰ってました。素敵なご両親だったのですね。お幸せだったと思います。
その時です!
「だめっ! それはあなたの(ジャケット)じゃないでしょ!」と厳しい介護士さんの声。振り返ると、サトシさん(70才 男性)が私のダウンのショートジャケットに袖を通そうとしているではありませんか。
介護士さんが慌てて 私に向かって「ごめんね。こちらで預かっておくわね!」と私のジャケットをサトシさんから取り上げました。
呆然とするサトシさん・・。何だかとても可哀そうでした。(ごめんなさい! サトシさん。)
椅子の背もたれに掛けておいた私のジャケットは赤茶色でしたので、サトシさんはご自分のもの(男物)と勘違いされたのでしょうか。私はサトシさんを混乱させてしまい(悪いことをしたなあ。)と思いました・・。
そのサトシさんも教師だった頃は、生徒たちから慕われる とても人気のある先生だったそうです。(カズさん談)
そうこうする内に再びN子先生の登場です! お約束を守られたようですね。
( 実施日:2018年12月9日(日) 14:00~15:30 )
長谷川 潾二郎 ≪ 猫 ≫ |