2019年2月25日月曜日

66)「N子先生の来所!」 その2  -えっ、駆け落ち?-

N子先生はカズさん(105才 女性)とトシコさん(95才 女性)の間に座りました。丁度、私がトシコさんにお話を伺っている最中でした。

今日のトシコさんは語りました!
トシコさんのご両親は ‘なんと’ 駆け落ちだったそうです。
婚姻を許して貰えなかったお二人は、東京から種子島まで逃げてきて、結婚されたとの事でした。とてもドラマチックです!

トシコさんはふるさと種子島のお魚が大好きだと仰いました。私が「どんなお魚がお好きですか?」と尋ねると、「そうねぇ、小魚かな。」とお答えになりました。
皆さま、食べ物の話では盛り上がります!

また、歌も大好きで軍歌(時代は満州事変でしょうか)等もよく歌うそうです。
「でもね、一人では歌えないの。」と小声になりました。「誰かが歌えば後について歌えるけどね・・。」と俯きながら付け加えました。

それから話はご長男にまで及びました。「息子はね、慶應ボーイなの!文京区で石油関係の会社を経営しているのよ。」と誇らしげに言い、いろいろとご説明して下さいました。ご自慢の息子さんのようです。 今日のお話には筋が通っておりました。いつもとは別人のようです。

私が「トシコさんは(文京区でご自宅近くの)この施設に入れてお幸せですね。」と言うと、「ここ ‘ゆしまの郷’ にはね、誰もが入れるわけじゃないのよ。不良は入れないの! ちゃんとした人だけ入れるの。』 と返答なさいました。
私は目が点になりました。いつもと話し方まで違っております。凛としておりました。

あらためて私は「敬聴」には、その方の自信を持っている事・自慢に思っている事をお尋ね(お聴き)することが大事なのだと思いました。当たり前のことでしたが とても勉強になりました。

因みにN子先生は繰り返し「どんな小魚が好きなの?」とトシコさんに尋ねておりました。

その後、カズさんと親しげに話をしていた私を見て N子先生が突然 「あなたが〇〇さん?・・前からあなたにお会いしたいと思っていたのよ。」 と仰いました。
「はっ?」わたし。どうやら この階のおじいちゃん、おばあちゃん(?)がN子先生に私の話をお聞かせしたようです。(たぶん・・、カズさんでしょうね。)

私が自分自身の ‘敬聴へのスタンス’ や ‘思い’ をご説明すると、N子先生はさらに興味をもたれ、話がはずみました。また私のこの ‘ブログ’ にも興味を示され「ブログの見かたを教えて欲しい。」と言われました。

それで私はN子先生の携帯の ‘お気に入り’ 画面に「これからは傾聴から敬聴へ!」を登録させて頂きました。時々は覘いてみて下さっているでしょうか。

 ( 実施日:2018年12月9日(日) 14:00~15:30 )



 photo: (c) Hiro K
http://ganref.jp/m/md319759/portfolios

睨眼

2019年2月15日金曜日

65)「N子先生の来所!」 その1

N子先生はこの施設の代表者で理事長Y先生の奥様です。

私がカズさん(105才 女性)のお話を伺っている時、カズさんは目ざとくエレベータを降りたN子先生を見つけました。そして嬉しそうに「N子先生!」と呼びかけました。するとN子先生はこちらに顔をむけ「あとで寄るわね!」とにこやかに答えました。

さて、カズさんのお話ですが、お父さまは警察官で 外では厳めしかったものの 家ではとても子煩悩な方だったそうです。

5歳の頃のカズさん(何と今から100年前です!)は「おとうちゃま」と呼び、勤務を終え帰宅されたお父さまを、お兄さまと二人で玄関の上がり框に座り、手をついて「お帰りなさい!」等とお迎えをしていたと懐かしそうに仰いました。(白いフリルエプロンを着けた、おしゃまな5歳のカズさんの姿が私の脳裏に浮かびました。)

そして二人は疲れていたお父さまの背中にのり「馬乗り等をして遊んでもらった」と当時を思い出しておりました。童心に返ったようで目をキラキラとさせておりました。

お父さまは 時々 サンドイッチをお土産に持ち帰ってきたとカズさんは仰いました。100年前にサンドイッチなどあったのでしょうか。
(地方出身の)他のお年寄りたちは「(その頃) サンドイッチなど食べた事はなかった」と口々に仰っておりました。

また、そんなお父さまも偶に(たまに)同僚等との意見の不一致で、いざこざもあったようですが、仏頂面で帰宅されても、カズさん達 子供の無邪気な顔をみると怒りも収まり機嫌がなおったとのことです。

そして そんな時にはお母さまが「人はそれぞれ、いろいろな考え方がありますよ。」等と慰め(宥め)ていたとも仰ってました。素敵なご両親だったのですね。お幸せだったと思います。

その時です! 
「だめっ! それはあなたの(ジャケット)じゃないでしょ!」と厳しい介護士さんの声。振り返ると、サトシさん(70才 男性)が私のダウンのショートジャケットに袖を通そうとしているではありませんか。

介護士さんが慌てて 私に向かって「ごめんね。こちらで預かっておくわね!」と私のジャケットをサトシさんから取り上げました。
呆然とするサトシさん・・。何だかとても可哀そうでした。(ごめんなさい! サトシさん。)

椅子の背もたれに掛けておいた私のジャケットは赤茶色でしたので、サトシさんはご自分のもの(男物)と勘違いされたのでしょうか。私はサトシさんを混乱させてしまい(悪いことをしたなあ。)と思いました・・。

そのサトシさんも教師だった頃は、生徒たちから慕われる とても人気のある先生だったそうです。(カズさん談)

そうこうする内に再びN子先生の登場です! お約束を守られたようですね。


  ( 実施日:2018年12月9日(日) 14:00~15:30 )



長谷川 潾二郎  ≪ 猫 ≫