2019年1月15日火曜日

63)病院でも敬聴?

この日、私は整形外科の受診日でした。
診察が終わり 看護師さんから処方箋を頂くのを待っていると、お隣に座った年配の女性から声をかけられました。

「わたし・・、何才だと思う?」と。「(うーん)・・。」私は考えました。 
すると「もうね、92才になるの。」と、にこにこしてお答えになりました。
「あら、ほんとですか。 見えませんね!」と私。

「この年になるとね、何もかもが大変なのよ・・。でもね、一人息子が何でもしてくれるの。ご飯も作ってくれて、ゴミ出しもしてくれるのよ。『私が(ゴミ出しを)するわよ。』って言っても聞かないの。」とその方は続けました。

「それは とても親孝行な息子さんですね。ありがたいですね。」と私が言うと、「本当よね。でも60(才)を過ぎてまだ独身なのよ・・。」と少々顔をしかめました。

それから、少し離れたところに座っている、酸素ボンベカートを携え、鼻チューブ(カニューラ)を装着した、3才年下だというご主人の話や生業などを詳しく話し始めました・・。私はあまり立ち入った話にならないように注意しながら、お聴きしておりました。

話はあれこれと長く続きました・・。
それから、唐突に 膝の上のバッグから歌手の ‘氷川きよし’ さんから頂いたという ‘セピア色になった年賀状’ を数枚取り出しました。いつも持ち歩いているようで四隅がボロボロでした。

以前は後援会に入っていたそうです。後援会に入会していた年数分の年賀状でしょう。私に一枚一枚、宝物のように見せて下さいました。もちろん手書きのメッセージがない大量印刷の年賀状でした。

「前に 知り合いに見せたら、『あの人はダメよ!』と氷川きよしくんを悪く言うのよ。」と口惜しそうに仰いました。

私が「人の好き嫌いなんて十人十色ですから、気にしないで応援すれば良いんじゃないですか。」と答えると、おばあちゃんは顔をほころばせました。

そうこうする内に診察の順番がきたようで、おばあちゃんの名前が呼ばれました。おばあちゃんは大事そうにその年賀状をバッグに戻し、持っていた杖を真っ直ぐに突きなおして 腰をあげました。

そして「話を聴いてくれてありがとう!」と私にお礼を言って下さいました。
診察室のドアが開いてからも何度も振り返り会釈をしてくれました。

私は(少しは良いことをしたのかな。)と思いながら、時計に目をやり急いで会計に向かいました。

     ( 2018年10月24日(水) 9:00~10:00 )




建仁寺 双龍図


四天王寺