2018年8月25日土曜日

54)「SILICA GEL」

たった一つの楽しみだった「クラス会(同期会)」 と言っても、ただ皆で集まって、一緒にお茶 (昭和初期に長野にも喫茶店ってあったのかしら?) を飲むだけのひと時だったそうです。(詳細はこのブログ 55) にて記載いたします。)

たいへんな時代だったのですね。今では・・、考えられません。 キクさん(99才 女性)は思いを巡らせているようでした。

一方、お馴染みのカズさん(105才 女性)ですが、私を見るなり、 『〇〇さん(私のこと)は、てっきり*北朝鮮かシンガポールにでもお出でになっているのかと思っていたわ。』と仰いました。(カズさんは相変わらず私を安倍総理の ‘関係者’ と思っているのです。)


*米朝首脳会談(を思ってでしょうか。):2018年6月12日にシンガポールで開催された ‘アメリカ合衆国(米国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)’ の両国トップによる首脳会談 。


カズさんは毎朝 新聞をお読みになるのが日課だそうです。ご立派です!

私が話題を変えるべく、エレベーターの正面横に置かれた「観葉植物のベンジャミン」に話を向けると、カズさんは 『あんな立派な木、いつ置いたのかしら?』 と不思議そうな顔をされました。


更に、『だれが運んだのかしらね?重かったでしょうに。』 と首をかしげました。
(もちろん、フェイクの軽い観葉樹でしたが。)


私が 『あの木は本物ではなくて人工樹木。偽物だと思いますよ。』 と言うと
カズさんは 『そうなの?』 と言いながら、ご自分の車椅子のハンドリム (自走用で駆動輪〔後輪〕の外側に付いているリング のこと。手でこぐ時に使用する。) に手をかけました。


本物か偽物かをご自身で確かめるおつもりです。たいへん・・積極的です!
ご自分が納得しないと気がすまない性質(たち)のようです。

私も一緒にエレベーターのところまで行き、カズさんに葉っぱを触ってみるようにお勧めすると、右手の親指と人差し指でちょっと触れ、それでもまだ首をかしげております。


私がラスターポット(植木鉢)の根の部分に、目立たぬように置かれた ‘SILICA GEL’ と英語で書かれた白い小袋 (乾燥剤) をお見せすると、その小袋を手にとり 『シ・リ・カ・ゲ・ル』 と英文字を読み始めました。やっとご納得・・されたようです。 


このような施設では、観葉植物が枯れそうだったり、傷んで弱っていたりすると 「観葉植物の手入れにも行き届かない」 といった印象になるのでフェイクが人気のようです。

因みに、介護士さんの事務机の上に置かれた ‘白い陶器の鉢植え’ は本物の ‘カネノナルキ’ という観葉植物でした。


そして、この日のカズさんは昼食をご家族と一緒にされる ‘外食日’ らしく、介護士さんから血圧測定を受けておりました。


                ( 実施日:2018年6月16日(土) 10:00~11:00 )




2018年8月15日水曜日

53)『クラス会?良いわよねぇ~!』  その1 (『あゝ野麦峠』の世界! 14歳で製糸工場へ)

今日は私の誕生日でした。そして午後からは3年ぶり、高校のクラス会です!

そんな話をキクさん(99才 女性)にすると、目を輝かせて、『クラス会?いいわよねぇ~。楽しいわよねぇ!』 と仰いました。

キクさんは高等小学校を卒業し、14歳で製糸工場に働きに出たとのことでした。

私は※『あゝ野麦峠』という映画を思い出しました。たしか・・、キクさんも長野のご出身だったはず。まさに映画の工女そのものでした。 以下、ちょっと調べました。


※『あゝ野麦峠』とは、山本茂実氏が1968年に発表したノンフィクション文学。副題は「ある製糸工女哀史」。


戦前に岐阜県飛騨地方の農家の娘(多くは10代で、14歳以下が2割もいた)たちが、野麦峠を越えて長野県の諏訪、岡谷の製糸工場へ働きに出た。
吹雪の中を危険な峠雪道を越え、また*劣悪な環境のもとで命を削りながら、当時の富国強兵の国策において有力な貿易品であった ‘生糸’ の生産を支えた、女性工員たちの姿を伝えた作品。

*【多くの少女達は、半ば身売り同然の形で年季奉公に出されたのである。工女たちは、朝の5時から夜の10時まで休みも殆どなく過酷な労働に従事した。工場では蒸し暑さと、さなぎの異臭が漂う中で、少女達が一生懸命に額に汗をしながら繭から絹糸を紡いでいた。また苛酷な労働のため、結核などの病気に罹ったり、自ら命を絶つ者も後を絶たなかったという。】


なお、映画(監督:山本薩夫氏)では、飛騨からの出稼ぎ女工の悲惨な面を強調して描かれているが、原作では工女の賃金にばらつきがあったことや、「我が家は貧乏だったので工女に行けなかった」、「実家の農家で働いていた方がきつかった」といった複雑な背景も描かれている。

また、糸値に翻弄される製糸家の厳しい実情などにも言及し、詳細な聞き取り調査のもと、日本の貧しく苦しい時代を懸命に生き抜いた人々を、その時代背景と共に浮き彫りにするように描かれている。

さて、キクさんと言えば
『他になんの楽しみもなかった当時は、同期会(クラス会)が唯一の楽しみだったの!』と遠いところを見る眼差しで、懐かしそうに仰いました。


                ( 実施日:2018年6月16日(土) 10:00~11:00 )



はりまや橋(純信・お馬のモニュメント)

高知 よさこい祭り