102才のお姉さま(カズさん)にやんわりと諭されたヨウジさん(90才男性)は、よろけるように立ち上がり、介助されてトイレに向かいましたが、暫くしてトイレから戻ってきた時に 意を決したような面持ちで、‘ はにかみ ’ ながら 『ありがと・・・。』 と、 しわがれ声で仰いました。
私は何だか申し訳ないような気になり、胸がしめつけられました。
ヨウジさんのような年代の男性は、女性に謝るとかお礼を言うのは苦手だと思われたからです。トイレで反省(?)し、考えた上での行為だったのでしょう。
なぜかこの時、私は絵本の『ルリユールおじさん』(いせひでこ作・絵)を思い出しました。
クレヨンを持った‘汚れ節くれだった’ヨウジさんの‘手’を見たせいでしょうか。
『ぼうず、あの木のように大きくなれ、名を残さなくてもいい。いい手を持て』という文中の言葉が脳裏に浮かびました。
おやつ時になると、皆さまから 『(3時のおやつのヨーグルトを)お土産に!』 と言われ続けております。名前も憶えていただき、市民権を得たような気がしております。
帰りがけには、(車椅子に乗せられ目を瞑ったまま) 介護士さんにおやつを食べさせて貰っているトモコさん(92才 女性)から 、私が車椅子の横に腰をかがめ、トモコさんの肩に軽く手を触れご挨拶をした時、 小さくかすかな声で 『いつ来たの?』 『今度はいつ来るの?』と仰いました。私の来所を待っていて下さっているのだと思いました。(感激でした。)
カズさんからは、『もう帰っちゃうの? もう少し遊んでいきなさいよ!』 『何か用事でもあるの?』 と引き留められました。
「私の方がお年寄り達に癒されている。元気と勇気を貰っている!」とあらためて思いました。
この話を敬愛する先輩女性に伝えると、『敬聴はあなたの天職ね。』と言われました。
(実施日:2016年7月16日(土)14:00~15:00)
直島 ベネッセハウス |