『たいへんねぇ!』と。 職員さんかしら? 助け舟を出して頂いたように感じました。
その場をとりなすように、お食事のメニュ―表を示して下さったり、壁に飾ってあるお人形用の着物の説明もして下さいました。
でも・・・、いろいろお話をしているうちに、普通に思えた70代の女性ですが、ところどころ辻褄が合わなくなるのです。
ふと見ると、彼女のニットブルゾン首のところから、ぬいぐるみのワンちゃんがちょこんと顔を出しているではありませんか。
そして彼女はそのワンちゃんに話しかけ始めました…。
『寒くない?そろそろご飯にしようかね?』と・・・。 ハットしました。
そうです。 ここは痴呆症状の重い方々のフロアーだったのです。
暫くすると、湯島天神の「菊祭り」から戻られた方々がフロアーに集まりはじめました。
私がご挨拶をすると、車いすで帰られた80代の女性が楽しそうに「菊祭り」のお話をしはじめました。 私は少しホッとしました。
傾聴時間も終わりに近づき、私は気を取り直して、もう一度最初にお話を伺いにいった方の所に行ってみました。
彼女の隣に腰を屈め、ただ傍に寄り添っていたら、急に彼女が涙を流しはじめました。そして今度は私の顔をじっと見つめました。
胸がつまりました。熱いものが込み上げてきました。少しだけ‘つたわった’ような気がしました。
傾聴時間の一時間を終え、帰り際にみなさんに笑顔で手を振ると、何人かが手を振りかえしてくれました。そして『また来てね!』と背中の方でどなたかの声が聞こえました。
(実施日:2015年10月31日(土)14:00~15:00 (認知症状の重いフロー))
photo: (c) Hiro K http://ganref.jp/m/md319759/portfolios |