一ヶ月ぶりに文京区の高級有料老人ホームへ傾聴に伺いました。お相手はT大の名誉教授、いつものKさんです。昼食が遅くなったということで30分ほどロビーで待たされました。
施設の方からは「Kさんは ちょっと気難しくて、日によってムラがある方なので、気をつけてください。」と言われました。そうかな?と私は思いました。
お部屋に伺うと「君は誰だっけね?」と言われました。私が「今日で3回目ですが、傾聴ボランティアの◯◯です。」と答えると、「ああ、そうか。最近はみんな忘れちゃうんだよ。」と仰いました。ちょっと悲しげな表情をされました。
私が「今日はKさんのお食事が終わるまで、30分くらいロビーでお待ちしていましたよ。」とお伝えすると、Kさんは目を丸くされ「言ってくれれば、食事をやめて戻って来たのに。」と仰いました。そして「悪かったね。」と。
私の「昼食は美味しかったですか」の問いには、かぶりを振り「食欲がないから・・」とぽつんとお答えになりました。「何がお好きなのですか。食べたい物はありますか?」と尋ねると、「カレーライス!」と即座に仰いました。長い教員生活のKさん。40年くらいだそうです。「学食のカレーライスも美味しいですよね。」と水を向けると、にっこりとなさいました。
Kさんはボランティアに興味があるらしく「ボランティアねぇ。 ちゃんとお金は貰えるの?」とお尋ねになりました。私が「ボランティアですから、貰えません。」とお答えすると「そう。じゃあ、本職は何?普段はどんな仕事をしているの。」等とお尋ねになりました。
私は以前の仕事をお伝えし「今は文京区で別のボランティア活動をしています。」とお答えすると「そりゃ大変だ。ご苦労さま。」と労って下さいました。最近は朗読も学んでいて、来月には頼まれて朗読をするとお伝えすると「朗読! 良いね。何処でするの?」と興味津々です。
場所をお教えし演目もお伝えすると、少し視線を上に向けて(想像されているのでしょうか)「君は声が良いからいいね。」と褒めてくださいました。私は思いがけない言葉にびっくりしました。
その後、Kさんは歌を歌いはじめました。例の明治大学の校歌です。もはや ご自分の世界です。しばらくすると「君、こんなところで油を売っていないで、早く帰りなさい!」「帰った方がいいよ」と仰いました。傾聴訪問が ‘油を売っている’ だって。思わず吹き出しそうになりました。でも 心が温かくなりました。
敬聴終了の間際に、私が窓から外を見て「ちょっと曇ってきましたねえ。これから雨だそうですよ。」と言うと、「傘は持っているの、大丈夫かい?」と案じてくださいました。そして・・「今日はこれで失礼致しますね。」と言うと、Kさんは少し手を上げ、何度も「ありがとう。」「ありがとう!」と繰り返し仰いました。私は胸が熱くなりました。
帰りに事務室でご報告すると、係の女性が「◯◯さん(私のこと)だと話が弾むのねぇ。相性が良いんですね。」と仰いました。Kさんは他の傾聴ボランティアには全然話をしない時もあり、30分くらいで引き上げてしまう方も多いとのこと。
そして、しみじみと仰いました。「あなたのお人柄ね。」と。くすぐったいような褒め言葉を頂戴しました。私は・・とても恐縮しました。
ふるさと山形 石崎神社の紅葉