念願が叶い先日、人間国宝の片岡仁左衛門さん(80歳)
夜の部の四世 鶴屋南北作『於染久松色読販(おせめ ひさまつうきなのよみうり)』は、 惚れた男のために悪事をはたらく玉三郎演じる土手のお六と、凄みのある色気で悪に満ちた仁左衛門演じる鬼門の喜兵衛夫婦が活躍する人気狂言の上演です。
そして次の演目は清元の舞踊『神田祭』です。こちらが私の一番のお目当てでした。粋で いなせな鳶頭を仁左衛門さんが、 艶やかな芸者を玉三郎さんが演じる至高のカップルの舞台です。江戸の粋 華やかな江戸風情が展開されて私は江戸時代にタイムスリップした気分になりました。
初めて玉三郎さんの舞台を観せて頂いたのは1985年12月 、日生劇場で上演された『天守物語』でした。 天守夫人富姫を玉三郎さんが演じ、 相手役の姫川図書之助を真田広之さんが演じられました。当時青年座の座員だった友人からチケットを頂き、私は仕事を休み 彼女の代わりに観せて頂いたのです。席はなんと一番前の真ん中でした。
そして仁左衛門さんの舞台はたくさん観せて頂きましたが、 一番印象的なのは2010年3月の「御名残三月大歌舞伎」。菅原伝授手習鑑『道明寺』での仁左衛門さんです。こちらも忘れられません。最高でした。歌舞伎座建替えのためのさよなら公演でした。
今回の舞台では仁左衛門さんの年齢を超越した圧倒的な色気に私は完全にノックアウ トされました!至福のひと時でした。本当に行った甲斐がありました。観劇料の18, 000円は安いくらいです。(こんなに良い席は年に一回くらいですが。)
そして玉三郎さんはどんな役をされてもひたすら高貴!美しすぎます。『於染久松色読販』の伝法な‘悪婆’と呼ばれるお六を演じてもです。
言うまでもなく、お二人の息はピッタリ! 特に花道での芝居 掛け合いは圧巻でした。‘男女の恋の濃密さ’がただよい、まさに二人だけの世界でした。ご両人の色香が舞台中 そして客席にまで広がり 息苦しくなるほどでした。至極のひと時を過ごしました。
同時代にあのような素敵な歌舞伎役者さんに出会えて有難いと思いま した。上質で成熟した芝居、私は「ありがとう」の気持ちでいっぱいになりました。